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アーロン・ジャッジが60本塁打以上なら、大谷翔平にMVPの可能性はないのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)Aug 8, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月8日、アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)は、シーズン44本目のホームランを打った。ヤンキースは110試合を終えたところなので、ジャッジのホームランは、2.5試合に1本のペースだ。あと52試合も同じペースだとすると、シーズン本塁打は64~65本に達する。

 ナ・リーグとア・リーグにおいて、シーズン60本塁打以上は、これまでに延べ8人が記録している。そのなかで、MVPを受賞したのは、1961年のロジャー・マリス(61本塁打)、1998年のサミー・ソーサ(66本塁打)、2001年のバリー・ボンズ(73本塁打)だ。

 ただ、8人中3人ということではない。1998年と1999年、2001年は、ナ・リーグに60本塁打以上の選手が2人ずついた。1998年と2001年は、その一方がMVPに選ばれている。実質的には、5シーズンに受賞が3度ということになる。

筆者作成
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 一方、同じシーズンに60本塁打以上が他にいなかった2人のうち、1927年のベーブ・ルース(60本塁打)は、受賞していないどころか、得票さえなかった。この年のア・リーグMVPに選出されたのは、ルースのチームメイト、ルー・ゲーリッグ(47本塁打)だ。ホームラン以外のスタッツを比べると、打率と打点、長打の本数はゲーリッグが上、OPSはルースが勝る。出塁率と長打率のどちらも、ルースのほうが高い。

 1999年のマーク・マグワイア(65本塁打)とソーサ(63本塁打)は、どちらもMVP投票のトップ3にランクインしていない。5位と9位だ。この年のナ・リーグMVPは、チッパー・ジョーンズ(45本塁打)が受賞した。トップ3が得た1位票は、チッパーが29票、ジェフ・バグウェル(42本塁打)が1票、マット・ウィリアムズ(35本塁打)が2票だった。バグウェルは、ポイントでウィリアムズを上回った。

 1999年のナ・リーグは、60本塁打以上の2人のみならず、リーグ・トップのOPS1.168――打率.379、出塁率.458、長打率.710のいずれも1位――を記録したラリー・ウォーカー(37本塁打)も、MVPを受賞していない。こちらは10位だ。総合指標のrWARは、8.6のランディ・ジョンソンがトップ。投手のランディは、サイ・ヤング賞に選ばれ、MVP投票では15位に位置した。野手のrWARは、バグウェルの7.4が最も高かった。

 MVPの選考にあたり、投票する記者がどのスタッツを重視するのかは、時代によって傾向が異なる。例えば、今日の投票で、打率を最も重視する記者がいるとは思えない。また、ホームランに限らず、一つのスタッツだけでMVPを選ぶ記者もいないはずだ。

 とはいえ、今シーズンのア・リーグの場合、現時点で言えば、MVPはジャッジだろう。

 44本塁打は、リーグ2位のヨーダン・アルバレス(ヒューストン・アストロズ)より14本多く、5位タイの大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)とは20本の差がある。ジャッジは、OPS1.068とrWAR6.3もトップだ。アルバレスは1.045(2位)と4.8(3位),大谷は.836(13位)と5.1(2位)。大谷のrWARは、野手としての1.9と投手としての3.2を合計した数値だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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