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21年ぶりのポストシーズンへ向け、マリナーズが一番人気の先発投手を獲得する

宇根夏樹ベースボール・ライター
ルイス・カスティーヨ Jun 10, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月29日、シアトル・マリナーズは、4人のマイナーリーガーと交換に、シンシナティ・レッズからルイス・カスティーヨを獲得した。

 同じ29歳のフランキー・モンタス(オークランド・アスレティックス)と並び、カスティーヨは、今夏のトレードで手に入れられる――球団が売りに出していることが確実な――最高の先発投手と言っていいだろう(「今夏のトレード市場を賑わせる「先発投手ビッグ3」。いずれも数ヵ月のレンタルではなく…」)。過去3シーズンの防御率は、3.40、3.21、3.98。今シーズンは1ヵ月出遅れたものの、14試合に登板して防御率2.86を記録している。多くのゴロを打たせる一方で、三振を奪うこともできるのが特徴だ。ハイブリッド、と言ってもいいかもしれない。

 カスティーヨを手に入れるために、マリナーズが手放したのは、遊撃手と右投手が2人ずつ。20歳のノエルビ・マルテと18歳のエドウィン・アローヨ、24歳のリーバイ・スタウドと22歳のアンドルー・ムーアだ。ムーア以外の3人は、MLBパイプライン(MLB.com)の球団プロスペクト・トップ30において、1位と3位と5位に挙げられていた。現在は、レッズの1位と6位と15位だ。

 今シーズン、マルテはA+の84試合で、打率.270と出塁率.360、15本塁打と12盗塁を記録している。アローヨはAの87試合で打率.316と出塁率.385、13本塁打と21盗塁。スタウドはAAの先発18登板で防御率5.28、ムーアはAの救援25登板で防御率1.95だ。

 決め手となったのは、マルテのような気がする。もし、ニューヨーク・ヤンキースが遊撃手のアンソニー・ボルプを含む3~4人を差し出していれば、カスティーヨは、マリナーズではなくヤンキースへ移籍していたのではないだろうか。こちらは開幕前のランキングだが、ベースボール・アメリカは、ボルプをプロスペクトの全体10位、マルテを18位としている。ヤンキースにいるもう一人の遊撃手、オズワルド・ペラザは55位だ。

 現在のメジャーリーグで、マリナーズ以上に「悲願のポストシーズン進出」というフレーズが当てはまる球団はない。2001年を最後に、マリナーズはポストシーズンから遠ざかっている。そのブランクは、どのチームよりも長いだけでなく、4月に「直近5年の全チーム順位。ポストシーズンから5年以上遠ざかるのは、マリナーズだけでなく…」で書いたとおり、群を抜く。

 7月29日を終え、マリナーズはワイルドカードの2番手に位置している。ポストシーズンへ進めるのは、3番手までだ。今年から、ワイルドカードは1枠増えている。とはいえ、マリナーズと4番手のクリーブランド・ガーディアンズとの差は、2ゲームに過ぎない。

 カスティーヨは、8月1日~3日のいずれかに、マリナーズのユニフォームを着て、ヤンキー・スタジアムのマウンドに上がるだろう。また、カスティーヨが市場から姿を消したことで、モンタスの人気はさらに高まり、堰を切ったように先発投手のトレードが多発しそうな気もする。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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