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失点を防ぐには「4つ目のアウト」と「3つ目のアウト」の入れ替えが必要だった

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホイ・パク(中央)とエイレイ・アドリアンザ(右)Jun 29, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月29日、ワシントン・ナショナルズは、5回表に1点を取られた。けれども、この失点は、ルールを熟知していれば、防げるものだった。

 1死二、三塁の場面だ。キブライアン・ヘイズ(ピッツバーグ・パイレーツ)が地面すれすれのライナーを打ち、二塁走者のホイ・パクと三塁走者のジャック・スウィンスキーは、バウンドすると思ったのだろう、どちらもスタートを切った。

 一塁手のジョシュ・ベルは、打球をノーバウンドで捕り、三塁手のエイレイ・アドリアンザへ送球した。アドリアンザは、ベースから離れたところで送球を受けた後、三塁に達していたパクにタッチし、併殺を完成させた。これで3アウト、イニング終了だ。

 ただ、その前に、スウィスキースウィンスキーは、本塁を駆け抜けていた。ナショナルズは、この1点により、3対4とリードされた。

 パクと同じく、スウィンスキーも飛び出していた。アドリアンザは、パクにタッチしたのに続き、三塁を踏んでいる。ただ、これは4つ目のアウトだ。ナショナルズがスウィンスキーの得点を無効にするには、審判に申し立て、4つ目のアウト(スウィンスキー)と3つ目のアウト(パク)を入れ替える必要があった。

 申し立てができるのは、守備についていた選手たちがフィールドから引き上げるまでだ。そうするには、すでに遅すぎた。

 その後、ナショナルズは逆転したものの、ブライアン・レイノルズにこの試合3本目のホームランを打たれ、再びリードされた。結局、ナショナルズは、7対8で敗れた。スウィンスキーの得点を無効にしていれば、試合の帰趨は違っていたかもしれない。

 なお、スウィンスキーの得点により、ヘイズには1打点が記録された。1年前に、ヘイズはホームランを無効にしている。

「ベースを踏み損ねた「幻のホームラン」が1日に2本。打った2人に共通するのはそれだけでなく…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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