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2年続けてマイナーリーグ契約の「ドラフト全体1位」は、今世紀最大の「ハズレ」なのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
ティム・ベッカム Apr 14, 2015(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ミネソタ・ツインズが、ティム・ベッカムとマイナーリーグ契約を交わした。ジ・アスレティックのダン・ヘイズらが報じている。

 32歳のベッカムは、2008年のドラフト全体1位だ。けれども、2019年を最後に、メジャーリーグではプレーしていない。昨オフも、マイナーリーグ契約でシカゴ・ホワイトソックスに入団。故障もあり、出場はAAAの45試合にとどまった。

 これまでのベッカムは、指名順位に見合う結果を残せていない。通算472試合の成績は、打率.249と出塁率.302、63本塁打と13盗塁、OPS.733だ。故障だけでなく、薬物検査の陽性反応による出場停止もあった。

 過去には、メジャーデビューできなかったドラフト全体1位もいる。メジャーデビューはしたものの、現時点のベッカムよりも少ない出場試合とホームランでキャリアを終えた野手も、数人いる。ただ、歴代のドラフト全体1位のうち、最初の20年間(1965~1984年)と直近の6年間(2016~21年)に指名された野手――ざっくりと括ると、今日ほどデータの分析が進んでいなかった時代の選手とこれからの選手――を除くと、出場500試合未満も70本塁打未満も、ベッカム以外にはいない。

 ベッカムの7年後に指名されたダンズビー・スワンソン(現アトランタ・ブレーブス)も、すでに665試合に出場し、77本のホームランを打っている。2004年のドラフト全体1位だったマット・ブッシュ(現テキサス・レンジャーズ)は、現時点の通算出場が140試合だが、メジャーデビュー前に野手から投手へ転向したので、通算140登板だ。ちなみに、ドラフト当時のブッシュとベッカムは、どちらも高校生の遊撃手だった(スワンソンは大学生の遊撃手)。メジャーデビュー前のブッシュについては、数年前に「堕ちたトップピック・コンビ結成!? 出所したドラフト全体1位がレンジャーズに入団」で書いた。

 ベッカムのベスト・シーズンは、今から5年目5年前の2017年だ。タンパベイ・レイズとボルティモア・オリオールズで計137試合に出場し、打率.278と出塁率.328、22本塁打、OPS.782を記録した。特に、夏のトレードでオリオールズへ移ってからは、50試合で10本のホームランを打った。このスパンの成績は、打率.306と出塁率.348、OPS.871だ。当時の年齢は27歳。ここから台頭してもおかしくなかったが、そうはならなかった。

 ツインズは、内野を守る控えのユーティリティ候補として、ベッカムを入団させたのだろう。もっとも、候補はベッカムだけではないし、その順位も高いとは思えない。若手のうち、ルイス・アライズは二塁のレギュラーとなり、控えの候補から外れるかもしれないが、まだ、ニック・ゴードンホゼ・ミランダがいる。さらに、ツインズは、ベッカムと契約した直後に、ダニエル・ロバートソンともマイナーリーグ契約を交わした。こちらは、2012年の全体34位だ。

 ロバートソンは、メジャーデビューする前に、オークランド・アスレティックスからレイズへ移籍した。メジャーリーグ1年目の2017年には、ベッカムと併殺デュオを組んだこともある。

 ベッカムと同じ年のドラフトで指名された、もう一人のベッカムについては、こちらで書いた。

「ベッカムが引退。14年前のドラフト全体8位。同じ年の全体1位だったベッカムは…」

 2000年のドラフト全体1位については、こちら。

「20世紀最後の「ドラフト全体1位」が引退を発表。317本塁打は全体1位の7番目。現役トップは…」

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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