Yahoo!ニュース

今年のストーブリーグで鈴木誠也が人気を博す理由。FAの外野手たちと比べると…

宇根夏樹ベースボール・ライター
鈴木誠也 JULY 31, 2021(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 鈴木誠也(広島東洋カープ)は、今オフ、ポスティング・システムを利用してメジャーリーグ行きをめざす。鈴木と契約したいと考えるメジャーリーグの球団は、少なくないはずだ。

 まず、鈴木は27歳と若い。今オフのFA市場に出ている主な外野手は、いずれも29歳以上だ(年齢は来年6月30日時点)。カルロス・コレイアは27歳の遊撃手だが、そもそも、これほど若くしてFAになる選手は、極めて少ない。球団に契約を解除されるか、ロースターから外されてFAになることを選ぶ選手はいるものの、その経緯からわかるとおり、彼らは結果を残すことができていないので、主なFAには当てはまらない。

 もちろん、鈴木が人気を博す理由は、年齢だけではない。2016年以降の6シーズン中、出塁率が.400を下回ったのは2017年(.389)のみ。どのシーズンもそれぞれ25本以上のホームランと二塁打を打ち、今シーズンのホームランは、それまで最多だった2018年(30本)を8本も上回った。さらに、2016~17年は各16盗塁、2019年は25盗塁を記録し(成功率は高くないが)、過去5シーズン中4シーズンはゴールデン・グラブを手にしている(今シーズンの受賞者は、まだ発表されていない)。

 2019年に40-40まで3盗塁に迫ったロナルド・アクーニャJr.(アトランタ・ブレーブス)との比較はさておき、鈴木は5ツールと選球眼をすべて備える、と評しても大袈裟ではない気がする。この5ツールとは、ヒッティング、ヒッティングのパワー、ランニング、フィールディング、スローイングを指す。

 それぞれのツールを比べれば、今オフのFA市場にも、鈴木に勝る、あるいは同水準のツールを持つ外野手はいる。例えば、カイル・シュワーバーホルヘ・ソレーアをはじめ、パワーのある選手は多い。ただ、シュワーバーとソレーアは、DHのほうが適している。ニック・カステヤノスは守備がうまくない上、選球眼を欠くフリー・スウィンガーだ。一方、スターリング・マーテイはスピードスターながら、パワーはそれほどでもなく、こちらも選球眼はよくない。また、マーテイの場合、センターをメインのポジションとしているので、鈴木とは需要が多少異なる。

 パワーがあって三塁と外野3ポジションを守るクリス・ブライアントを除くと、明らかに鈴木より上というFAの外野手は見当たらない。メジャーリーグでも、日本プロ野球と同じようなパフォーマンスができるかどうかは不透明だが、そのリスクを踏まえても、鈴木のツールと年齢は、メジャーリーグの球団にとって魅力であるに違いない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事