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大谷翔平がエンジェルスを去るのはいつ!? FAになるのは2年後だが、その前に…

宇根夏樹ベースボール・ライター
大谷翔平(左)とアルトゥーロ・モレノ Sep 25, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は、メジャーリーグ4年目を終えようとしている。このままいくと、FAになるのは、2023年のシーズン終了後だ。エンジェルスは、あと2シーズン、大谷を保有できる。

 その保有期間が終わるまでに、エンジェルスには、いくつかの選択肢がある。FAとなる前に複数年の延長契約を交わし、2024年以降も大谷を保有する。FAになるまで大谷を保有し、再契約を見送るか、再契約を申し出る。FAとなる前に、トレードで大谷を他球団へ放出する。大きく分けると、この3つだろう。解雇は、まずあり得ない。

 ただ、9月26日の試合後に行われた記者会見で、大谷は、他の質問とともに、将来に関する問いにこう答えた。

 今後2年間にエンジェルスがプレーオフへ進めるかどうかについては「このままでは勝てないんじゃないかなと思います」、自身がエンジェルスに残るかについては「そうですね。もちろん、ファンの人も好きですし、球団自体の雰囲気も好きであるので。ただ、それ以上に勝ちたいという気持ちが強いですし、プレーヤーとしてはそれのほうが正しいんじゃないかなと思っています」、契約延長の話が出ているのかについては「現時点ではないですね」と語った。

 勝てるメンバーを揃えなければ、契約の延長はせず、2年後にはエンジェルスを去って、勝てるチャンスのより大きな他の球団と契約する――。エンジェルスに対し、大谷がそう通告したようにも聞こえる。

 もちろん、大谷と同じく、エンジェルスも勝ちたいと思っている。それも、数年後ではなく、今すぐだ。最後のポストシーズン進出は2014年。今年を含め、もう7年も遠ざかる。勝つために何が最も必要なのかも、エンジェルスはわかっている。先発投手だ。

 7月のドラフトで、エンジェルスは20の指名権をすべて投手に費やした(「めざすは「投手王国」!? エンジェルスが今年のドラフトで指名した選手は、投手が20人、野手はゼロ」)。けれども、これは即効薬にはならない。彼らのなかからローテーションに加わる投手が出てくるまでには、数年かかる。

 チームに白星をもたらすことのできる先発投手、エースやそれに次ぐクラスの投手を手に入れるのは、簡単なことではない。

 オーナーのアルトゥーロ・モレノが財布を開けば、金はある。だが、FAの先発投手は、エンジェルスでは投げたがらないかもしれない。5人によるローテーションが大多数を占めるなか、エンジェルスは6人でローテーションを組む。二刀流の大谷がいる以上、これは来シーズンも変わらないだろう。5人でなく6人だと、1人当たりの登板は少なくなり、タイトルやアウォードを手にするチャンスは減る。さらに、その次にFAとなった時に、再び中4日で投げられるのかを懸念し、契約に二の足を踏む球団も出てきかねない。

 トレードは、相手の球団をうなずかせる交換要員が見当たらない。例えば、8月にMLB.com(MLBパイプライン)が発表したプロスペクト・ランキングの100人中、80位までに入ったエンジェルスの選手は、24位のリード・デトマーズだけ。左投手のデトマーズは、うまくいけば、来シーズンからローテーション入りする予定なので、交換要員にはできない。若手の外野手2人、ジョー・アデルブランドン・マーシュを手放す可能性も低い。来シーズンに限れば、彼らの一方とマイク・トラウトジャスティン・アップトンで外野トリオを形成できるが、来シーズンの終了とともにアップトンはFAになる。

 一方、エンジェルスが大谷に延長契約を申し出るにしても、こちらも、どんな条件を提示すべきなのかの見極めは、困難を極める。

 エンジェルスと大谷は、昨年2月に2年850万ドルの延長契約を交わした。もっと長期の契約であれば、大谷がFAになるのを遅らせることができたが、エンジェルスはそれまでの故障歴を踏まえ、そうしなかったと思われる(大谷が長期の契約を断った可能性もある)。今シーズン、大谷は離脱することなくプレーした。おそらく、MVPを受賞するだろう。とはいえ、この1シーズンだけで故障の心配が払拭されたわけではない。

 ましてや、大谷は二刀流の選手だ。いつまで二刀流を続けることができるのか、二刀流を終えた後はどちらに専念するのか、など、不透明なことがいくつもある上、比較できる前例もない。この場合、ベーブ・ルースは参考にならない。時代が違いすぎるだけでなく、ルースが二刀流だったのは、1918~19年の2シーズンだ。

 大谷とエンジェルスの間で、契約延長の話が動き出すのは、早くても今オフの補強が一段落した後、来年の2月以降ではないだろうか。その時点で投手陣が整備されていなければ、この顔ぶれであれば勝てると大谷が感じなければ、話は進みそうにない。

 契約の延長がないまま、保有できる期間が減っていった場合、いずれかの時点でエンジェルスが大谷を放出することもあり得る。エンジェルスは、FAになった大谷にクオリファイング・オファーを申し出れば、大谷がそれを断って他球団と契約した際に、ドラフト指名権を1つ与えられるが(12月に労使協定が切れるため、変更の可能性あり)、エンジェルスはそれよりも前に、トレードでもっと大きな見返りを手に入れようとするはずだ。

 今オフはなくても、来年の夏、来オフ、再来年の夏、エンジェルスが大谷を「売る」機会は3度ある。

 なお、上の写真で大谷が持っているのは、右手がチームの最優秀投手に贈られるニック・エイデンハート賞、左手はチームMVPのトロフィーだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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