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主力を大量放出の「ファイヤー・セール」を敢行した2チームは、5年前と2年前のワールドチャンピオン

宇根夏樹ベースボール・ライター
アロルディス・チャップマン(左)とアンソニー・リゾー Jul 30, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 シカゴ・カブスとワシントン・ナショナルズは、トレード市場において「ファイヤー・セール」を敢行した。他にも、数人の主力選手を放出したチームはあるが、手放した選手たちの質と量を総合すると、今夏の最大の「売り手」はこの2チームだろう。

 5年前、カブスは108年ぶりにワールドシリーズを制した。ナショナルズは2年前のワールドチャンピオンだ。こちらは、1969~2004年のモントリオール・エクスポズ時代を含め、球団初のワールドシリーズ優勝を成し遂げた。

 放出した全員ではないが、どちらのチームも、そこにはワールドシリーズ優勝メンバーが含まれている。カブスの場合は、アンソニー・リゾー(→ニューヨーク・ヤンキース)、ハビア・バイエズ(→ニューヨーク・メッツ)、クリス・ブライアント(→サンフランシスコ・ジャイアンツ)がそうだ。ヤンキースへ移ったリゾーは、2016年の優勝をともに味わったアロルディス・チャップマンと再びチームメイトになった。5年前の夏、チャップマンはヤンキースからカブスへ移り、そのオフにFAとなってヤンキースへ戻った。

筆者作成
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 また、ナショナルズが手放した選手のうち、ジョン・レスター(→セントルイス・カーディナルス)とカイル・シュワーバー(→ボストン・レッドソックス)の2人も、2016年の優勝メンバーだ。昨オフ、レスターはカブスに2021年の相互オプションを破棄され、1年500万ドルでナショナルズと契約した。シュワーバーはカブスにノンテンダーとされ(契約を解除され)、1年1000万ドルでナショナルズへ。どちらの契約も、2022年の相互オプションがついている。

 カブスの「ファイヤー・セール」は、6月25日~7月6日の11連敗が直接の要因だ。連敗が始まる前の時点で、カブスはミルウォーキー・ブルワーズと並び、地区首位に位置していた。けれども、昨オフからその予兆はあった。大ベテランのレスターはともかく、カブスはシュワーバーと契約しなかっただけでなく、ダルビッシュ有(とビクター・カラティニ)をサンディエゴ・パドレスへ放出した(この2人は2016年の優勝メンバーではない)。

 今オフ、カブスはウィルソン・コントレラスを手放す可能性もある。年齢は29歳。来シーズンが終わると、FAになる。強打の捕手なので、需要はあるはずだ。

 一方、ナショナルズでは、2019年にシャーザーと三本柱を形成した2人が、昨シーズンに続き、今シーズンも誤算だった。スティーブン・ストラスバーグは2シーズンで計7登板しかできず、すでに今シーズンを終えている。パトリック・コービンの防御率は、2019年の3.25に対し、昨シーズンは4.66、今シーズンは5.78だ。それぞれ、7年2億4500万ドルの2年目と6年1億4000万ドルの3年目。引き取り手を見つけるのは難しい。

 今のところ、ナショナルズにホアン・ソトを手放す気はない。ソトは22歳と若く、今シーズンを含め、OPSはデビューから4シーズンとも.920を下回ったことがない。FAになるのは、2024年のオフだ。ただ、契約を延長し、2025年以降もつなぎ止めるには、少なくとも総額3億ドル、あるいは4億ドルが必要だろう。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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