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エンジェルスの動きは中途半端!? トレード市場で高く売れそうな2投手は手放さず、別の投手2人を放出

宇根夏樹ベースボール・ライター
ライセル・イグレシアス(ロサンゼルス・エンジェルス)Jun 4, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今夏のトレード市場において、ロサンゼルス・エンジェルスは「売り手」に回った。デッドラインの7月30日に、先発投手のアンドルー・ヒーニーとリリーフ投手のトニー・ワトソンを放出した。2人とも、今シーズンが終わるとFAになる。それぞれの移籍先は、ニューヨーク・ヤンキースとサンフランシスコ・ジャイアンツだ。彼らと交換に、エンジェルスは計5人の投手を得た。

 エンジェルスには、手放したヒーニーとワトソンの他にも、今オフにFAの選手がいる。そこには、先発投手のアレックス・カッブとクローザーのライセル・イグレシアスも含まれる。

 18先発で防御率5.27のヒーニーに対し、カッブは15先発で防御率3.82を記録している。奪三振率は10.82と9.73、与四球率は2.97と3.01。どちらもヒーニーがやや勝るとはいえ、そう変わらない。また、ヒーニーは左投手、カッブは右投手だが、カッブは左打者を苦手にしておらず、むしろ、右打者よりもよく抑えている。

 ただ、7月23日に登板したカッブは、右手の人差し指のマメにより、マウンドを降りた。その後、右手首の炎症も判明した。故障者リスト入りの発表は、デッドラインが過ぎてからだが、この故障が「残留」の理由ではないかと思われる。

 一方、イグレシアスは故障しておらず、デッドライン前の奪三振率13.50と与四球率1.52、防御率3.23は、いずれもワトソンを大きく凌ぐ。2人の役割が、クローザーとセットアッパーであることを踏まえれば、その差はさらに広がる。しかも、イグレシアスの役割は、一般的なクローザーにとどまらない。イニングをまたいで投げることも多く、ピンチに登場して火が燃え広がる前に消し止める、ファイヤーマンに近い。こちらも、ワトソンは左投手、イグレシアスは右投手だが、イグレシアスも左打者に打たれているわけではない。

 イグレシアスを手放さなかったのは、今秋のポストシーズン進出をあきらめてはいない、というエンジェルスの意思表示なのかもしれない。あるいは、イグレシアスを放出しようと動いたものの、トレードを成立させることができなかった、ということもあり得る。

 2件のトレードにより、エンジェルスが獲得した投手5人のうち、ジャイアンツから手に入れたサム・セルマンは、30歳の左投手だ。メジャーリーグ3年目の今シーズンは、4月末から5月下旬にかけて7試合に登板し、計8.0イニングで自責点4(防御率4.50)。3試合で失点(自責点)を記録した。その後はAAAの22.1イニングで防御率4.03。移籍の翌日、エンジェルスのアクティブ・ロースターに加わった。他の4人は、いずれも右投手。まだ、メジャーデビューはしていない。彼らがメジャーリーグで投げるのは、来シーズン以降になりそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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