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ベースを踏み損ねた「幻のホームラン」が1日に2本。打った2人に共通するのはそれだけでなく…

宇根夏樹ベースボール・ライター
キブライアン・ヘイズ(ピッツバーグ・パイレーツ)Jun 4, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 打球が外野のフェンスを越えても、4つのベース、一塁、二塁、三塁、本塁に触れなければ、ホームランにはならない。

 6月8日には、ベースを踏まなかったとして、2本のホームランが幻となった。

 ペンシルベニア州ピッツバーグのPNCパークで行われた試合の1回裏、キブライアン・ヘイズ(ピッツバーグ・パイレーツ)の打球はライトのポール際へ飛び、どこかに当たってフィールドへ跳ね返ってきた。

 ホームランかどうかだけでなく、フェアかファウルかもわからなかったのか、打球を見ながら走っていたヘイズは、一塁を踏み損ね、四辺のうち外野側のすぐ横を踏んで二塁へ向かった。その後、ホームランであることに気づいてスピードを緩めたが、一塁を踏んでいないことには気づかなかった――あるいは、自分以外は誰も気づいていないと思った――らしい。そのまま戻らずにホームインした。

 これに対し、ロサンゼルス・ドジャースのデーブ・ロバーツ監督がビデオ判定を求め、その結果、ヘイズのホームランは取り消された。

 一方、テキサス州フリスコのライダース・フィールドで行われたAAの試合で、5回表にノースウエスト・アーカンソー・ナチュラルズのボビー・ウィットJr.(カンザスシティ・ロイヤルズ)が弾き返したボールは、芝生席の向こうにある通路まで飛んでいった。この試合の1回表にも、ウィットJr.はホームランを打った。

 ゆっくりとダイヤモンドを回ってきたウィットJr.は、最後に軽くステップを踏むように跳ね、ホームインした。一瞬、足元に視線を落としたが、立ち止まることはなかった。

 こちらは、次の選手が打席に入ったところで、投手がプレートを外して投げ、その球を受けた捕手が本塁を踏むと、球審はアウトを宣告した。ウィットJr.が本塁を踏まなかったというのだ。記録は、三塁打となった。

 ヘイズは24歳の三塁手。今シーズンがメジャーリーグ2年目だ。ウィットJr.は20歳の遊撃手。今シーズンか来シーズンには、メジャーデビューすると思われる。

 彼らはどちらも、ドラフトで1巡目に指名され、プロ入りした。2015年の全体32位と2019年の全体2位だ。父がメジャーリーガーという点も共通する。通算144本塁打のチャーリー・ヘイズと通算142勝のボビー・ウィットだ。

 なお、パイレーツでは、まったく違うプレーながら、5月27日にウィル・クレイグもミスを犯している。それについては「打者が一塁の手前で「逆走」し、本塁と一塁の間に挟まれて…。その結果、走者は生還、自身は二塁へ」で書いた。クレイグは26歳の一塁手だ。ドラフト1巡目とメジャーリーグ2年目は、ヘイズと同じ。2016年に1巡目・全体22位で指名された。

 クレイグもヘイズも、ミスは自身だけの問題ではないように思える。周りが声をかけていれば、防げたのではないだろうか。クレイグの場合は、他の野手たちだ。ヘイズの時は、すぐそばに一塁コーチのタリック・ブロックがいたが、こちらも打球の行方を追っていて、ヘイズが一塁を踏み損ねたのを見逃したらしい。ちなみに、クレイグは6月4日にDFAとなった。このミスよりも、打てなかったのが理由だろう。

 一方、ウィットJr.は不運だった可能性もある。本人はツイッターで、本塁を踏んだと主張している。映像や写真を見る限り、ウィットJr.が正しく、球審が間違っているように思える。

 ウィットJr.の「家族」については、3月にこちらで書いた。

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ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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