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マイク・トラウトの離脱が大谷翔平に及ぼす影響。出塁率はむしろ上がる!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
大谷翔平(左)とマイク・トラウト May 2, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 5月18日、マイク・トラウト(ロサンゼルス・エンジェルス)が故障者リストに入った。前日の試合で、トラウトは走塁中に右のふくらはぎを痛めた。2年前の夏と同じ箇所だ。その時は3試合の欠場で済んだが、今回は6~8週間の離脱となる。エンジェルスがそう発表した。6月中に復帰できるかどうかといったところだ。

 大谷翔平に限らず、エンジェルスの投手は、トラウトの援護を失う。ここまでのトラウトは、センターを守り、ホームランと二塁打を8本ずつ打ち(三塁打は1本)、リーグ4位タイの打率.333、1位の出塁率.466、大谷に次ぐ2位の長打率.624、こちらも1位のOPS1.090を記録している。さらに、大谷の場合は他の先発投手と違い、マウンドに上がり、二刀流ではなく投球に専念すると、自身とトラウトがいない打線となる。

 トラウトの離脱は、打者としての大谷にも影響を及ぼしそうだ。

 今シーズン、2人が打線に揃った33試合中32試合の打順は、大谷が2番、トラウトは3番だった。順序が入れ替わった5月16日の試合を除き、大谷の後ろにはトラウトがいた。相手からすると、大谷と勝負を避けるわけにはいかなかった。

 大谷の後ろがトラウト以外の打者となると、必ずしもそうではなくなる。5月18日の3打席目がいい例だ。エンジェルスが1点を追う、5回裏の2死三塁。クリーブランド・インディアンズのテリー・フランコーナ監督は、カウントが3-0となったところで、大谷を敬遠四球で歩かせ、次のアンソニー・レンドーンと勝負することにした。

 1点差だったため、最初から大谷を避けてレンドーンと勝負すると決めていたのではないと思われる。ただ、フランコーナ監督は、カウント次第ではそうしてもいいと考えていたのではないだろうか。大谷とトラウトを比べれば、大谷の方が討ち取りやすい――あくまでも比較の話であり、大谷が討ち取りやすいということではない――が、大谷とレンドーンなら、状況によっては大谷よりもレンドーンと勝負したほうがいい、となる。

 この試合において、他の3打席はそういう状況ではなかった。最初の2打席はイニングがまだ進んでいなかった上、インディアンズはそれぞれ、5点差と4点差をつけていた。走者もおらず、大谷にホームランを打たれても、痛手にはならない。最後の打席は、インディアンズが1点リードの8回裏。先頭打者の大谷と勝負を避ける、歩かせても構わないという選択肢は、後ろが誰であっても存在しなかった。

 今シーズンの打撃成績は、レンドーンよりもジャレッド・ウォルシュが優れている。ただ、ウォルシュは大谷と同じ左打者だ。大谷の後ろがウォルシュなら、相手は左投手を起用しやすい。一方、登板した投手は、イニングを終わらせるか、故障に見舞われない限り、少なくとも3人の打者と対戦する必要があるので、大谷の後ろが右打者であれば、相手は左投手を起用しにくくなる。ちなみに、今シーズンの1番から6番は、デビッド・フレッチャー、大谷、トラウト、レンドーン、ウォルシュ、ジャスティン・アップトンの「右、左、右、右、左、右」が最も多い。

 トラウトの不在により、大谷の出塁率は上がるかもしれない。勝負を避けられ、四球が増える結果としてだ。これは、敬遠四球に限らない。また、もともと、大谷は投球をじっくり選んでストライクだけを打つタイプではないが、勝負してもらえないことが増え、我慢しきれず、今までは見送っていた投球にも手を出すようになると、それによって調子を崩すことにもなりかねない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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