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フィールドを駆け回ったのは、選手ではなく…猫だった

宇根夏樹ベースボール・ライター
Apr 2, 2021(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ロサンゼルス・ドジャースとコロラド・ロッキーズが対戦した4月2日の試合は、ドジャースが11点を挙げた。一方、最初の6イニングはトレバー・バウアー(ドジャース)からヒットを打てなかったロッキーズも、7回裏に4本のホームランなどで6点を返した。

 さらに、8回裏には、珍客がクアーズ・フィールドにやってきた。毛の長い灰色の猫が、どこからともなく球場に入り込み、ネット裏のフェンスの上を、投手から見て左から右へ走っていった後、三塁ベースの手前からセンターを守るコディ・ベリンジャー(ドジャース)のそばまで駆けていき、そこで座り込んだ。

 試合は中断し、事態を収拾しようとスタッフが現れた。猫は再び走り出したが、フェンス際で捕まって「退場」となった。

 デンバー・ポストのキーラン・ニコルソンによると、その後、猫はスタッフから逃れ、どこかへ去っていったという。ロッキーズの広報は、ニコルソンに「スタッフも猫も怪我はしていない」「球場付近には野生の猫が何匹かいる」とコメントしている。

 この椿事を報じた記事の多くは、ニコルソンをはじめ、タイトルに「パーフェクト(purr-fect)」という単語を使っている。猫が喉を鳴らす様子を表す「purr」を、完璧の「perfect」に引っかけたものだ。完璧なかわいさ、といったところだろうか。

 過去には、球場に現れた猫が「呪い」として語られたこともあった。シカゴ・カブスとニューヨーク・メッツがシェイ・スタジアムで対戦した、1969年9月9日の試合だ。オンデック・サークルにいたロン・サント(カブス)の後ろを黒猫が歩いていき、ダグアウトを通って消えていった。カブスは開幕からナ・リーグ東地区の首位に立ち続け、8月16日の時点では2位に9ゲーム差をつけていたが、この翌日、メッツに追い抜かれ、そのままシーズンを終えた。

 ただ、言うまでもないが、猫に罪があるわけではない。黒猫が登場した試合にカブスが喫した黒星は、8連敗の6敗目。カブスの下降は、その前から始まっていた。

 なお、ドジャースとロッキーズの試合は、この前日の開幕戦でも椿事が起きている。それについては、こちらで書いた。

開幕戦でいきなり「走者を追い越し」ホームランを取り消される。幻となったこの1本は後々響いてくる!?

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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