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通算317本塁打のスラッガーが、メキシカン・リーグで現役復帰。めざすのはメジャーリーグではなく…

宇根夏樹ベースボール・ライター
エイドリアン・ゴンザレス(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 エイドリアン・ゴンザレスが、メキシカン・リーグの新球団、マリアッチス・デ・グアダラハラと契約を交わした。ロサンゼルス・タイムズのビル・シェイキンが報じている。

 ゴンザレスは、2000年にドラフト全体1位で指名され、メジャーリーグで317本のホームランを打った。オールスター・ゲームには5度選ばれ、一塁手としてゴールドグラブも4度受賞している。けれども、2018年6月にニューヨーク・メッツを退団してからは、マイナーリーグや独立リーグ、ウィンター・リーグでもプレーしていない。現在の年齢は38歳。来月、39歳となる。

 ただ、ゴンザレスがめざすのは、メジャーリーグ復帰ではない。東京オリンピックだ。

 ゴンザレスはこれまで、メキシコ代表として、ユース・チーム、カリビアン・ワールドシリーズ、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でプレーしてきた。ゴンザレスはシェイキンに「(オリンピックを含め)この4つを成し遂げれば、メキシコ代表としてのグランドスラムのようなもの。それが、まだ引退していない唯一の理由さ」と語ったという。

 ゴンザレスが言う「グランドスラム」のなかで、思い出されるのは、4年前のWBCだ。1次ラウンドのグループDは、プエルトリコが3試合とも白星を挙げ、メキシコ、ベネズエラ、イタリアは1勝2敗で並んだ。プエルトリコとともに2次ラウンドへ進むチームは、3チームのうち失点率が低い2チームによるワンゲーム・プレーオフで決まる。最終戦でベネズエラを下したメキシコは、ワンゲーム・プレーオフ進出と報じられた。ところが、その直後、メキシコが初戦にサヨナラ負けを喫した9回裏は、1アウトも取れなかったので守備イニングに含めないと解釈され、失点率が変わった結果、ワンゲーム・プレーオフはイタリアとベネズエラが対戦した(ベネズエラが勝利)。

 この混乱に対し、ゴンザレスは「ワールドカップをめざしているけど、リトルリーグのワールドシリーズにも及ばない」と批判し、過去3度の大会にも出場していたものの(WBCの鉄人たち。4大会続けて出場する大物メジャーリーガーも)、「二度と出場しない」と宣言した。

 新型コロナウイルスのパンデミックは収束しておらず、この夏にオリンピックが開催されるかどうかは、まだ予断を許さない。中止となれば、ゴンザレスは再び失意に陥るかもしれない。

 なお、ゴンザレスがプレーするマリアッチスには、元・北海道日本ハムファイターズの中村勝も在籍している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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