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身長175cm未満で体重120kg以上のメジャーリーガー。それだけでも一見の価値はあるが…

宇根夏樹ベースボール・ライター
アレハンドロ・カーク(トロント・ブルージェイズ)Sep 21, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 失礼ながら、アレハンドロ・カーク(トロント・ブルージェイズ)の体型は、「コミカル」と形容したくなる。身長は5フィート8インチ(約172.3cm)、体重は265ポンド(約120.2kg)だ。

 かつて、ジョン・クラックは「俺はアスリートじゃねえんだよ、おばさん。俺はベースボール・プレーヤーなのさ」という名言(?)を残した。とはいえ、これは体型ではなく、喫煙に対してだ。ベースボール・リファレンスによると、カークの体重は、身長5フィート9インチ(約175.3cm)以下の選手では、最重量らしい。ブライアン・ペーニャの240ポンド(約108.9kg)上回るとしている。

 2005~16年にメジャーリーグでプレーしたペーニャは、キューバ出身の捕手だった。身長は5フィート9インチだ。同じく捕手のカークは、21歳のメキシカン。9月11日にケイレブ・ジョセフと入れ替わりに昇格し、翌日にメジャーデビューした。AAとAAAでプレーしたことはない。

 ただ、9月21日にカークが目を惹いたのは、体型だけではなかった。「8番・捕手」として出場し、4打数4安打を記録した。1打席目のヒットはキャリア3本目、2打席目の二塁打は初長打、3打席目のヒットはフェンス直撃のシングル、4打席目のホームランは初アーチだ。

 MLBスタッツによると、21歳以下の捕手による1試合4安打は、2004年のジョー・マウアー以来だという。スタッツ・バイ・スタッツは、21歳以下の捕手が長打2本を含む1試合4安打以上を記録するのは、1969年8月3日のジョニー・ベンチ以来、とツイートしている。当時のマウアー(2004年7月7日)もベンチも、カークと同じ21歳だった。マウアーは二塁打1本を含む5打数4安打、ベンチは二塁打2本を含む6打数5安打を記録した。

 マウアーは首位打者を3度獲得し、3度目の2009年はMVPも受賞した。殿堂入りしているベンチは、「ビッグ・レッド・マシン」の中心選手だった。1970年と1972年に、本塁打と打点の二冠&MVP。打点王は1974年にも獲得した。ゴールドグラブの受賞回数は、マウアーが3度、ベンチは10度を数える。

 この2人と違い、カークがゴールドグラブを手にすることはないだろう。捕手ではなく、一塁かDHが適任だと思われる。カークのセールス・ポイントは、打撃だ。マイナーリーグの成績を見る限り、低いクラスではあるものの、水準以上のパワーを持ち、選球眼も優れる。2017~19年の計151試合で、打率.315と出塁率.418、17本塁打と41二塁打を記録している。三振よりも四球が多く、その数は60と89。三振率は9.7%、四球率は14.4%だ。なお、三塁打は2本、盗塁は5。盗塁失敗は一度もない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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