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リリーフ投手初の「9者連続奪三振」は、他の点でも「史上初」

宇根夏樹ベースボール・ライター
タイラー・アレクザンダー(デトロイト・タイガース)Aug 2, 2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月2日、タイラー・アレクザンダー(デトロイト・タイガース)は、リリーフ投手の新記録を打ち立てた。3回表、先発投手のロニー・ガルシアが、この回の先頭打者にホームランを打たれたところで降板。代わってマウンドに上がったアレクザンダーは、最初の打者から9人続けて三振に仕留めた。10人目の打者にぶつけたところでストリークは途切れ、トム・シーバーの10者連続奪三振(1970年4月22日)には届かなかったが、ロン・デービスが持っていたリリーフ投手の最長ストリーク、8者連続奪三振(1981年5月4日)を上回った。

 なお、試合をまたいだストリークは、ここには含んでいない。デービスは8者連続奪三振で試合を終わらせ、次の登板では、最初の打者から三振を奪った(2人目は外野フライ)。メジャーリーグで11シーズン(1978~88年)を過ごしたデービスは、1989年にヤクルトスワローズでも投げた。

 アレクザンダーの9者連続奪三振は、リリーフ登板に加え、他にも「史上初」があった。アレクザンダーは左投手。アレクザンダーが及ばなかったシーバーと、アレクザンダーが肩を並べた6人は、いずれも右投手だ。

 対戦した最初の打者から9人続けて奪三振も、アレクザンダーの前にはミッキー・ウェルチ(1884年8月28日)しかいなかった。1900年以降の「モダン・ベースボール」に限れば、アレクザンダーが初ということになる。アーロン・ハラング(2012年4月13日)も、最初の3イニングに9者連続奪三振を記録したが、これは2人目からだ。ハラングは先頭打者にヒットを打たれた。

筆者作成
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 昨シーズンまで、アレクザンダーは先発投手として投げてきた。マイナーリーグの通算110登板は、先発が102試合、リリーフが8試合だ。昨シーズンのメジャーリーグでも、7月3日の初登板を含め、13登板中8試合で先発マウンドに上がった。今シーズンはローテーションに入れず、ブルペンへ回った。

 また、これまでのアレクザンダーは「奪三振マシン」ではなかった。マイナーリーグ時代の通算奪三振率は7.54。昨シーズンのメジャーリーグでは奪三振率7.88。今シーズンも、最初の3登板は、計4.0イニングで3三振を奪ったに過ぎなかった。4登板目のこの日は、カーブに近い曲がりのスライダーがよく決まり、三振の山を築いた。

 アレクザンダーがかぶっていたキャップは、「殿堂入り」することになった。

 

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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