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7年ぶりのメジャーリーグ復帰を果たした2人のうち、一方しか注目されなかった理由

宇根夏樹ベースボール・ライター
左から3人目がブルックス・レイリー(現在は背番号「43」)Feb 15,2020(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今シーズン、7年ぶりのメジャーリーグ復帰を果たしたのは、ダニエル・バード(コロラド・ロッキーズ)だけではない。7月24日の開幕戦に登板したブルックス・レイリー(シンシナティ・レッズ)も、2013年を最後にメジャーリーグのマウンドから遠ざかっていた。けれども、レイリーの復帰登板は、バードよりも1日早かったにもかかわらず、大きな話題にはならなかった。

 これには、いくつかの理由がある。

 かつてのバードは、プロスペクトだった。2006年のドラフトで、ボストン・レッドソックスから1巡目・全体28位指名を受けて入団した。それだけでなく、実績も残している。メジャーリーグ2年目の2010年から2年続けて70試合以上に登板し、両年とも30ホールド以上を記録した。2010年は防御率1.93。2011年の防御率は3.33ながら、8月末の時点では2.03。5月から7月にかけての25登板連続無失点は、2013年に上原浩治に塗り替えられるまで、レッドソックスの球団記録だった。

 一方、レイリーは2009年のドラフト6巡目・全体200位。シカゴ・カブスに入団し、プロ4年目にメジャーデビューしたものの、2012~13年の登板は計14試合に過ぎず、防御率も7.04と冴えなかった。

 また、極度の制球難に陥ったバードは、それを解消できないまま、数球団のマイナーリーグを経た後、2017年のオフに引退。アリゾナ・ダイヤモンドバックスで、コーチとなった。7年ぶりのメジャーリーグ復帰のみならず、現役復帰でもある。それに対し、レイリーは2015年から昨シーズンまで、韓国のロッテ・ジャイアンツでローテーションの1~2番手として投げ、5年続けて30試合以上に先発した。現在の年齢も、35歳のバードが上。レイリーは32歳だ。

 メジャーリーグのブランクも、細かく言えば、バードの方が5ヵ月長い。バードがメジャーリーグのマウンドに上がったのは、2013年4月27日以来。レイリーは2013年9月27日以来だ。

 さらに、バードは復帰登板で、5回途中から1.1イニングを投げて無失点に封じ、勝利投手となった。2012年5月29日から数えて、8年ぶりの白星を手にした。レイリーも三者凡退で復帰を飾ったが、これは、6点リードの最終回。白星だけでなく、セーブもホールドもつかなかった。ちなみに、レイリーがメジャーリーグで白星を挙げたのは、2012年8月18日の1試合。今シーズン中に通算2勝目を記録すれば、こちらも8年ぶりだが、やはり、そのブランクはバードよりも短い。

 とはいえ、レイリーも長い年月を経てメジャーリーグへ戻ってきた。しかも、それまでプレーしていた韓国プロ野球が5月に始まった時点では、メジャーリーグは開幕を迎えられるかどうかも、わからなかった。

 現時点では、バードもレイリーも、今シーズンの登板は2試合。バードは計3.1イニング、レイリーは計3.0イニングを投げ、どちらも1失点だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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