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ポストシーズン史上3人目のノーヒッターは惜しくも逃したけれど…。この快投の持つ意味は大きい

宇根夏樹ベースボール・ライター
アニバル・サンチェス(ワシントン・ナショナルズ)Oct 11, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 リーグ・チャンピオンシップ・シリーズの初戦で、アニバル・サンチェス(ワシントン・ナショナルズ)がノーヒッターに迫った。ポストシーズンのノーヒッターは、これまでに2度、1956年のワールドシリーズ第5戦と2010年のディビジョン・シリーズ第1戦しかない。前者はドン・ラーセンによる完全試合だ。後者はロイ・ハラデイが記録した。

 サンチェスは7イニングを投げ終え、被安打0、与四球1、与死球2。8回裏に2人続けて討ち取った――1アウト目はバックの好守に助けられた――後、代打のホゼ・マルティネス(セントルイス・カーディナルス)にヒットを打たれ、ショーン・ドゥーリトルと交代した。次の回もドゥーリトルが投げ、ナショナルズは2対0で勝利を収めた。

 あと4アウトのところでノーヒッターを逃したとはいえ、ナショナルズにとって、サンチェスの快投と白星は大きい。サンチェスは、マックス・シャーザースティーブン・ストラスバーグパトリック・コービンに次ぐ、ローテーションの4番手だ。サンチェス以外の3人は、ワイルドカード・ゲームとディビジョン・シリーズの計6試合でフル回転し、それぞれ3試合に登板した。

筆者作成
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 このトリオがまったく投げなかったのは、ポストシーズン7試合目となる、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第1戦が初めてだった。第2戦以降は、シャーザー、ストラスバーグ、コービン、サンチェスという、通常のローテーションとなる見込みだ。

 また、リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第1戦は、これまでの6試合中3試合を締めくくったダニエル・ハドソンを欠いていた。ディビジョン・シリーズ第5戦に投げた後、妻が3人目の娘を出産するのに立ち会うため、ハドソンはカリフォルニア州ロサンゼルスからアリゾナ州フェニックスへ飛んだ。娘はサンチェスの快投よりも早く生まれ、ハドソンは第2戦からチームに加わるという。

 なお、6年前のリーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第1戦でも、サンチェスはノーヒッターに近づいた。この時は、6人を歩かせたこともあって、6イニングを投げるのに116球を費やし、被安打0のままマウンドを降りた。その後に登板した3投手も無安打に封じたものの、ホアキン・ベノワが9回裏1死からヒットを打たれ、継投ノーヒッターとはならなかった。ESPNのオールデン・ゴンザレスによると、ポストシーズンで2度、少なくとも6回を終えるまでノーヒッターを継続した先発投手は、サンチェスが初めてだという。

 ポストシーズンではないが、サンチェスは13年前の9月6日に、ノーヒッターを達成している。当時は、メジャーリーグ1年目の22歳だった。サンチェスもナショナルズも、ワールドシリーズ優勝は一度も経験していない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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