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2年連続サイ・ヤング賞は当確。前半戦は防御率3点台だったのに…

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジェイコブ・デグローム(ニューヨーク・メッツ)Sep 25, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨シーズン、ジェイコブ・デグローム(ニューヨーク・メッツ)は、前半戦も後半戦も防御率1点台を記録し、サイ・ヤング賞に選ばれた。

 一方、今シーズンの前半戦は、防御率3.27だった。ナ・リーグで100イニング以上の22人中5位ながら、1位のヒョンジン・リュ(ロサンゼルス・ドジャース)は1.73、2位のルイス・カスティーヨ(シンシナティ・レッズ)は2.29、3位のマックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)は2.30。デグロームは、トップ3から大きく離されていた。

 ところが、9月25日の登板を終え、デグロームはサイ・ヤング賞をほぼ手中に収めている。

 後半戦に入ってからは、前年を上回った。最初の6登板は計38.0イニングを投げて自責点4。最後の3登板は7イニング無失点を繰り返し、その直前と合わせ、23イニング連続無失点を継続したままシーズンを終えた。後半戦の防御率1.44は、昨シーズンの前半戦(1.68)と後半戦(1.73)よりも低い。シーズン防御率は2.43まで下がった。

 デグロームとは反対に、トップ3の防御率は跳ね上がった。後半戦の防御率は、リュが3.51、シャーザーが4.81、カスティーヨは4.52。リュのシーズン防御率はデグロームより低いが、その差はないに等しい0.02だ。しかも、デグロームの204.0イニングに対し、リュは175.2イニングしか投げていない。

 リュは、9月28日に登板する予定だ。そこで完封すれば、防御率は2.29まで下がる。もっとも、ドジャースはポストシーズンを控えている。そこまで長く投げさせるのは、5月7日の93球完封のように、球数が極端に少ない場合だけだろう。6イニング無失点だと、防御率は2.33だ。デグロームとの差は0.10にとどまる。

 190イニング以上で防御率3.00未満は、デグロームしかいない。リュと同じく、カスティーヨもあと1試合に投げるだろうが、200イニングには届かず、防御率は3.00以上が確定している。シャーザーは172.1イニングで防御率2.92。次の登板は、ワイルドカード・ゲームになりそうだ。

 また、イニング、防御率、FIP、奪三振、WHIPのいずれも、デグロームはトップ2に入っている。それぞれのトップ2のもう一人は、FIPと奪三振にシャーザーがいるだけで、他は違う投手だ。

 デグロームの白星は11しかないものの、昨シーズンと比べれば1つ多い。

 昨年、サンディエゴ・ユニオン-トリビューンのジョン・マフィーは、シャーザーを1位、デグロームを2位とした。ワシントン・ポストのスコット・アレンによると、マフィーは勝敗を重視したという。デグロームが受賞するまで、主に先発として投げ、12勝以下でサイ・ヤング賞に選ばれた投手はいなかった。ただ、昨年投票した記者30人のうち、デグロームを1位にしなかったのは、マフィーだけだ。

筆者作成
筆者作成

 なお、後半戦の防御率は、デグロームが1位ではない。ジョン・フラハティ(セントルイス・カーディナルス)は、92.1イニングを投げて防御率0.97を記録した。シーズン全体では防御率2.85。前半戦の防御率が4.64まで高くなければ、デグロームのライバルになっていたかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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