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「出塁率2割台の盗塁王」が20年ぶりに生まれる!? 出塁が少なくても盗塁が多いのは…

宇根夏樹ベースボール・ライター
マレックス・スミス(シアトル・マリナーズ)Jul 6, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ア・リーグの盗塁王は、マレックス・スミス(シアトル・マリナーズ)が獲得するだろう。現時点の盗塁は45。2位には43盗塁のアダルベルト・モンデシー(カンザスシティ・ロイヤルズ)がいるが、9月22日に遊撃の守備でダイビング・キャッチをした際、左肩を痛めてシーズンを終えた。2人を除くと、40盗塁以上の選手はナ・リーグにもいない。

 ただ、どちらも出塁率は低い。スミスはリーグ・ワースト6位の.303。モンデシーは規定打席に達していないが、スミスを下回る.291だ。出塁率2割台の盗塁王――0割台と1割台の盗塁王は存在しない――は、1999年のブライアン・ハンターが最後。この年、ハンターはア・リーグ最多の44盗塁を記録したが、出塁率.280は両リーグの157人(規定打席以上)のなかで最低だった。スミスの出塁率はハンターほど低くはないが、最終的に3割を割ってもおかしくない。このままの出塁率でも、2005年のホゼ・レイエス(60盗塁/出塁率.300)以来の低さとなる。

 出塁率が低いにもかかわらず、盗塁が多い理由としては、いくつか考えられる。思いつくままにざっと挙げてみると、(1)盗塁を数多く試みている、(2)盗塁成功率が高い、(3)出塁のなかでも盗塁する機会のないホームランは少ない、(4)併殺崩れなどで塁上に残ることが多い、(5)前を打つ選手の出塁率が低く、走者となった時に先の塁が空いていることが多い、などだ。

 スミスの場合、盗塁成功と失敗の合計は53度、成功率は84.9%。モンデシーは50度と86.0%だ。50度以上の選手は、2人以外にいない。盗塁成功率は、成功と失敗が合計20度以上のなかで、リーグ4位と2位に位置する。ホームランは6本と9本。(1)と(2)と(3)については、概ね当てはまると言えそうだ。

(4)は検証が難しいが、併殺打は7本と6本。本数としては多くない。けれども、併殺打となる状況における併殺打の割合は、スミスが14.0%(7/50)、モンデシーは9.2%(6/65)だ。メジャーリーグ全体もア・リーグ全体も10%強なので、スミスの割合はそれより高く、モンデシーもそう低くない。こうしたことからすると、(4)は該当しない可能性が高い。

 また、スミスの打順は1番が多い。マリナーズの「8番」と「9番」は、いずれも出塁率3割未満だ。スミスは(5)も当てはまる。一方、モンデシーは主に2番。ロイヤルズの「9番」は出塁率.279だが、「1番」は.336だ。他チームの「1番」と比べると高くはないとはいえ、ロイヤルズでは「4番」と「3番」に次いで高い。

 いずれにせよ、スミスもモンデシーも、この出塁率はあまりにも低い。盗塁王を獲得しても、来シーズンのレギュラーは約束されない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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