半世紀ぶりに「ミラクル・メッツ」が甦るのか。後半戦の25試合で19勝を挙げ、ワイルドカードへあと一息
今年は「ミラクル・メッツ50周年」だ。それに合わせるかのように、再びミラクルが起きようとしている……のかもしれない。
1969年のニューヨーク・メッツは、「ミラクル・メッツ」や「アメイジン・メッツ」と謳われた。球団創設から7年続けて負け越し、この年も5月27日の時点では借金5を抱えていたが、そこから勝率.678(82勝39敗)を記録。地区優勝を飾ったのみならず、ワールドシリーズ優勝も成し遂げた。
今シーズン、メッツは前半戦を借金10で終え、夏のトレード市場では、先発投手のザック・ウィーラーかノア・シンダーガードを放出するのではないかと噂されていた。メッツはそうせず、7月28日に先発投手のマーカス・ストローマンをトロント・ブルージェイズから獲得し、アメイジングまではいかずともサプライズを起こしたが、その翌日には、同じく先発投手のジェイソン・バーガスをフィラデルフィア・フィリーズへ放出した。
トレード時点の防御率は、ストローマンが2.96、バーガスは4.01だった。それ以外の点も、ストローマンはバーガスを上回る。とはいえ、メッツは今シーズンよりも、むしろ、来シーズンを見据えていたはずだ。今秋のポストシーズン進出に全力を注ぐのであれば、バーガスをフィリーズへ放出することはなかっただろう。地区順位だけでなくワイルドカード・レースにおいても、フィリーズはメッツの上に位置する。ストローマンは、今オフにFAとなる「レンタル」ではなく、来シーズンも保有できる。
だが、怒涛の快進撃により、ワイルドカードの2番手にいるフィリーズまで、メッツは1ゲーム差に迫っている。7月25日~8月1日の7連勝に続き、黒星一つを挟み、8月3日から6連勝(継続中)。後半戦の勝率.760(19勝6敗)は、30球団ベストだ。
50年前と違い、今シーズンのメッツは、ポストシーズンをめざしてスタートを切った。昨オフにエドウィン・ディアズとロビンソン・カノーをシアトル・マリナーズから獲得した――交換に手放した5人のうち2人は、今年のオールスター・フューチャーズ・ゲームに選出された――ことからも、それは明らかだ。前半戦の低迷を抜け出し、ようやく、本来の力を発揮し始めたと見ることもできる。
ただ、ここまでは、対戦相手に恵まれた面もある。後半戦の25試合中7試合は、マイアミ・マーリンズが相手だった(6勝1敗)。メッツと同じナ・リーグ東地区で、マーリンズは最下位を独走している。さらに言えば、対戦した時点で相手チームの勝率が.500を超えていたのは、2試合しかなかった。
それに対し、8月9日~9月8日の27試合は、現時点でポストシーズン進出圏内にいるチームとの対戦が24試合もある。「ミラクル・メッツ再び」と謳われるかどうかは、ここからの1ヵ月にかかっている。