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アスレティックスが仕掛けた、今夏の「マネー・ボール」。獲得したベテランに支払う金額は25万ドル未満

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホーマー・ベイリー Jun 29, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 7月14日、オークランド・アスレティックスが、カンザスシティ・ロイヤルズからホーマー・ベイリーを獲得した。

 33歳の先発投手と交換に手放したのは、23歳の遊撃手、ケビン・メレルだ。2017年のドラフトで全体33位指名を受け、今シーズンはAAでプレーしていた。

 移籍するまでのベイリーは、18先発で防御率4.80だった。しかも、その前の3シーズン(2016~18年)は、いずれも防御率6点台。年齢と成績からすると、数ヵ月のレンタルに対し、差し出した見返りは大きすぎる気もする。

 ただ、アスレティックスがベイリーに支払う金額は、25万ドルに満たない。

 今シーズンのベイリーは、6年1億500万ドルの契約最終年で、年俸は2300万ドルのはずだった。だが、この2300万ドルは、ロイヤルズでもアスレティックスでもなく、ロサンゼルス・ドジャースが支払う。昨年12月、計7選手が動くトレードで、ドジャースはシンシナティ・レッズからベイリーを獲得した。そして、直後にベイリーを解雇した。

 ベイリーは2月にロイヤルズとマイナーリーグ契約を交わし、開幕直後にメジャーリーグのロースターに加わった。昇格した際の年俸は55万5000ドルという契約だったので、シーズン途中に獲得したアスレティックスが負担するのは、すでにロイヤルズが払った金額を差し引いた分となる。

 年俸3500万ドルのスティーブン・ストラスバーグ(ワシントン・ナショナルズ)は、33試合に投げたとしても、1試合当たりの金額は100万ドルを超える。アスレティックスの先発投手陣で最も年俸が高いマイク・ファイヤーズは、1試合当たり24万5455ドルだ。それに対し、ベイリーがここから10先発した場合、アスレティックスが支払う1試合当たりの金額は、ファイヤーズの約10分の1だ。

 ベイリーが先発投手として使い物にならなかったとしても、金銭的なリスクはないに等しい。

 また、ベイリーの交換要員となったメレルの期待値は、ドラフトの順位ほど高くない。今シーズンはAAの82試合で、打率.246&出塁率.292、2本塁打&13盗塁。スピードはあるものの、MLBパイプラインをはじめ、いくつかのメディアは、将来像をスーパー・ユーティリティと評している。

 さらに、2012~13年に2年連続200イニング以上&防御率3点台――どちらのシーズンもノーヒッターを達成――などの実績は別にしても、今シーズン、ベイリーは6月以降の7先発で防御率3.49を記録している。移籍直前の5先発に限れば、防御率2.48だ。

 7月17日、ベイリーはアスレティックスの投手として、先発マウンドに上がる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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