ジャイアンツのエースは「トレード拒否権」を行使するのか。対象はヤンキースやレッドソックスなど8球団
サンフランシスコ・ジャイアンツは、地区最下位に沈んでいる。夏のトレード市場では、売り手に回るだろう。その目玉となるのは、エースのマディソン・バムガーナーだ。今シーズンが終わると、バムガーナーはFAになる。
バムガーナーを欲しがる球団は、少なくないはずだ。デビューから昨シーズンまで、防御率はどの年も3.40を超えたことがなく、今シーズンは4.04ながら、FIPは3.43で、K/BBは7.25と優秀だ。また、通算18本塁打のバッティングもさることながら、バムバガーナーはポストシーズンに強く、2010~16年の16登板で防御率2.11を記録している。
バムガーナーの契約には、8球団に対するトレード拒否権がついている。これまで、どの球団かは報じられていなかったが、今月中旬にジ・アスレティックスのケン・ローゼンタールが発したツイートによると、その球団は、アトランタ・ブレーブス、ボストン・レッドソックス、シカゴ・カブス、ヒューストン・アストロズ、ミルウォーキー・ブルワーズ、ニューヨーク・ヤンキース、フィラデルフィア・フィリーズ、セントルイス・カーディナルスだという。ジャイアンツがこの8球団――ローゼンタールの情報が正しいとして――へバムガーナーを放出するには、それ以外の21球団と違い、本人の同意が必要となる。
もっとも、バムガーナーは「この8球団には行かない」と宣言しているわけではない。移籍しながらポストシーズンへ進めなかったということにならないよう、トレード拒否権を活用するのではないだろうか。
例えば、こういったことが考えられる。アストロズとブレーブスの2球団が、バムガーナーの獲得に動く。ジャイアンツからすると、提示された交換条件はブレーブスが上回る。けれども、その時点の順位とゲーム差が現在と同じだとすると、ポストシーズンに近いのはアストロズだ。地区2位に7ゲーム差をつけ、アストロズは首位を走っている。一方、ブレーブスは地区首位まで3.5ゲーム差の2位、ワイルドカードの2番手までは2ゲーム差の6位にいる。バムガーナーはジャイアンツに、放出先がブレーブスならトレード拒否権を行使すると伝える(あるいは実際に行使する)。そうなると、ジャイアンツとしては、交換条件が劣っていても、アストロズへ放出するしかなくなる。
トレード自体は、バムガーナーも望むところだろう。3年ぶりにポストシーズンで投げ、5年ぶり4度目のワールドチャンピオンとなる機会が巡ってくるだけではない。シーズン途中に移籍したFAは、クオリファイング・オファーの対象外だ。球団はドラフト指名権を失うことなく契約できるので、そのFAの人気は高まる。