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突然のアーチ量産。「400試合で10本」だった選手が「40試合で10本」

宇根夏樹ベースボール・ライター
トミー・ラステラ(ロサンゼルス・エンジェルス)May 9, 2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今シーズン、ロサンゼルス・エンジェルスで最も多くのホームランを打っているのは、マイク・トラウトではないし、もちろん、アルバート・プーホルスでもない。トミー・ラステラだ。

 前年までのラステラは、スラップ・ヒッターだった。5シーズンの計396試合で、ホームランは10本に過ぎなかった。それが、今シーズンは36試合で10本に達した。ホームラン1本を打つのに要する打数も、82.8打数から10.3打数へ。このペースは、今シーズン10本以上の34人中7位に位置し、わずかながらコディ・ベリンジャー(ロサンゼルス・ドジャース)を上回る。

筆者作成
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 ラステラの身長は6フィートに届かず、マイナーリーグ時代も二桁のホームランを打ったシーズンはなかった。

 30歳にしてパワー・ヒッターに変身した理由の一つには、出場機会の変化が挙げられる。昨シーズンはキャリア最多の123試合に出場したが、そのうちの90試合は代打で起用され、スタメンは24試合しかなかった。それに対し、今シーズンは36試合中30試合がスタメンだ。主に二塁を守り、三塁手とDHとしてもラインナップに名を連ねている。これにより、1試合当たりの打席は1.56から3.39へ。2014~18年の2.39打席と比べても、1試合につき1打席増えている。

 また、今シーズンのラステラは、打球の角度を上げ、強く弾き返している。スタットキャストによると、昨シーズンの角度は8.1度、初速95マイル以上の打球は24.6%。今シーズンはそれぞれ、15.6度と31.5%だ。

 もしかすると、これは一時的なものではなく、本物なのかもしれない。

 昨年11月、エンジェルスは1対1のトレードで、シカゴ・カブスからラステラを獲得した。その時点の交換相手はPTBNL(後日決定選手)で、翌月、マイナーリーガーのコナー・リリス-ホワイトがカブスへ移った。リリス-ホワイトは26歳のリリーフ左腕だ。ドラフト入団は2015年の32巡目・全体975位。カーブを決め球としていて、三振を奪う力はあるが、制球に課題を残す。

 カブスについてはリリス-ホワイトの今後次第だが、ここまでのところ、このトレードはエンジェルスにとって「ホームラン」と言っても過言ではあるまい。

 今シーズン、ラステラの年俸は135万ドル。FAになるのは、来シーズンの終了後だ。

 

 

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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