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椿事の連鎖反応。投手が代走、DH解除、10年目の内野手デビュー、無走者からの敬遠、投手が代打

宇根夏樹ベースボール・ライター
オースマス(左から2人目)、ボージャス(中央)、カルフーン Apr18,2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月22日の試合で、椿事の連鎖反応が起きた。投手の代走起用、DH解除、メジャーリーグ10年目の内野手デビュー、この試合2度目となる無走者からの敬遠四球、そして、投手の代打起用。発端となったのは、選手の負傷だ。

 12回裏、1点ビハインドのロサンゼルス・エンジェルスは、ブライアン・グッドウィンのヒットで同点に追いついた。ただ、一塁走者だったザック・コザートは、二塁を回ってからヘッド・スライディングで帰塁した際、頭と首を内野手の足にぶつけて痛め、試合から退いた。

 エンジェルスのダグアウトに野手は残っておらず、コザートの代走には、3日前に先発登板したフェリックス・ペーニャが起用された。ペーニャはメジャーリーグ4年目。それまでの出場59試合は、すべて投手としてだった。

 ペーニャが先の塁へ進むことはなく、イニングは終わった。代走はできても、コザートの抜けた三塁を守るのは無理がある。ブラッド・オースマス監督は、トミー・ラステラを二塁から三塁へ動かし、DHを解除してピーター・ボージャスをDHから二塁へ。マウンドには、ペーニャと交代した――ペーニャからの継投ではなく――ルーク・バードが上がった。

 二塁に限らず、ボージャスが外野以外を守るのは、マイナーリーグを含めても初めてのことだ。メジャーリーグ10年目、868試合目、32歳。にもかかわらず、ボージャスはライトへ抜けそうな打球にダイブし、捕球はできなかったもののグラブに当てると、素早く拾って一塁へ投げた。打ったのはブレット・ガードナー(ニューヨーク・ヤンキース)だけに、少しでも遅れていればセーフになっていたはずだ。ダグアウトにいた大谷翔平も、拍手でこのプレーを称えた。

 イニングはさらに進んで14回裏。直前に1点をリードしたヤンキースは、2死走者なしとした後、コール・カルフーンを敬遠四球で出塁させた。生還すれば同点となる走者を献上した格好だが、次の打者は13回表から投げているバードだ。繰り返すが、エンジェルスに野手は残っていない。

 ヤンキースは11回裏にも、敬遠四球を与えて2死一塁としている。この時点でコザートは退場していなかったが、マイク・トラウトとの勝負を避けた。ベースボール・リファレンスによると、敬遠四球が公式記録となった1955年以降、延長イニングの無走者時に敬遠四球で歩かされたのは、トラウトが53度目、カルフーンは54度目だ。1試合2人は過去に2度あるが、どちらもイニングの表と裏。同じチームの選手2人は、初めてのことだった。

 エンジェルスはバードに代え、同じく投手のトレバー・ケイヒルを代打に送った。バードは打席に立ったことがなく、ケイヒルは打率.117(179打数21安打)だ。シカゴ・カブスにいた3年前にも、代打として起用されている。だが、代打初安打とはならず。空振り三振を喫し、試合は終わった。

 なお、この試合では、バードが14回表に1イニング4奪三振を記録した。もっとも、これだけ椿事が続いては、あまり特別なことには感じられない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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