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3人が二桁の本塁打を打っているのに、あのチームは全体でたった7本

宇根夏樹ベースボール・ライター
左からC.スチュワート、M.マートック、N.カステヤノス Mar 31,2019(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月18日、コリン・ベリンジャー(ロサンゼルス・ドジャース)とクリスチャン・イェリッチ(ミルウォーキー・ブルワーズ)が同じ試合でホームランを打ち、クリス・デービス(オークランド・アスレティックス)――ボルティモア・オリオールズのクリス・デービスではない――を含め、シーズン10本塁打は3人となった。

 彼らに限らず、今シーズンも多くのホームランが出ている。1チームの1試合平均は1.30本。2017年の1.26本を上回る。この年の6105本塁打は、どのシーズンよりも多かった。

 ところが、なかには10本塁打に達していないチームもある。デトロイト・タイガースがそうだ。クリスチャン・スチュワートが3本、ゴードン・ベッカムが2本、ジョン・ヒックスニコ・グッドラムが1本ずつ。チーム全体で7本にしかならない。昨シーズンはチーム最多の23本を打ったニコラス・カステヤノスも、2012年に三冠王を獲得したミゲル・カブレラも、いまだにシーズン1号が出ていない。

 10本塁打の3人の他に、8本打っている選手も3人いるので、選手の本塁打ランキングにタイガースを入れると、ホゼ・アルトゥーベ(ヒューストン・アストロズ)とポール・ゴールドシュミット(セントルイス・カーディナルス)の2人と並び、7位タイに位置する。

筆者作成
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 シーズン全体において「1選手の本塁打>1チームの本塁打」という事例は、過去に皆無ではない。極端な例を挙げると、ベーブ・ルースが60本のホームランを打った1927年は、ルースのいたニューヨーク・ヤンキース――ルー・ゲーリッグも47本――を除く15チーム中12チームが60本に届かず、4チームはルースの半数未満だった。

 けれども、「1選手の本塁打>1チームの本塁打」は、1949年を最後に途絶えている。この年、シカゴ・ホワイトソックスに8本塁打以上の選手はおらず、チーム全体では2番目に少ないワシントン・セネタースと38本差の43本だった。この本数は、ナ・リーグで本塁打王を獲得したラルフ・カイナーを11本下回り、ア・リーグ本塁打王のテッド・ウィリアムズと同数で並んだ。

 今シーズンのタイガースは、ここまで9勝9敗と健闘しているが、70年ぶりの珍記録を作るのだろうか。ちなみに、ホワイトソックスが43本塁打しか打てなかった時、ロン・ガーデンハイヤー監督(タイガース)はまだこの世にいなかった。彼が生まれたのは、その8年後だ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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