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マリナーズに加わった9人のドラフト1巡目選手。そのうち、再建の柱となるのは何人?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ジャステス・シェフィールド Mar 8, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 再建に向けて舵を切ったシアトル・マリナーズは、数多くの選手を放出した。一方で、加わった選手も少なくない。そのなかには、ドラフト1巡目指名を受けてプロ入りした選手が8人もいる。日本のドラフトで1巡目に指名された菊池雄星を含めれば、その数は9人だ。開幕までに、まだ増える可能性もある。

 彼らのうち、ジャステス・シェフィールドジャレッド・ケレニックジャスティン・ダンの3人は、期待のプロスペクト(有望株)だ。順調にいけば、2021年のローテーションは、菊池、シェフィールド、マルコ・ゴンザレスエリック・スワンソン、ダンの5人になるだろう。2021年もしくは2022年には、ケレニックも彼らの後ろを守っているはずだ。シェフィールドとスワンソンは、ジェームズ・パクストンの交換要員として、ニューヨーク・ヤンキースから移ってきた。ケレニックとダンは、エドウィン・ディアズロビンソン・カノーを放出したトレードで、ニューヨーク・メッツから移籍した。

筆者作成
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 ただ、他の5人は事情が異なる。J.P.クロフォードは24歳と若く、昨年の開幕前にはベースボール・アメリカのプロスペクト・ランキング全体16位とベースボール・プロスペクタスの14位に挙げられていたが、ここ数年は伸び悩みが続く。ランキングの順位も、前より落ちている。フィラデルフィア・フィリーズがジーン・セグーラらを獲得する際に手放したのは、将来性に見切りをつけたからだとも考えられる(もちろん、マリナーズはそう見てはいないが)。

 悪い意味で、クロフォードの一歩先を歩いているのがケイレブ・カワートだ。過去4年とも、メジャーリーグの出場は50試合以下。昨年12月にウェーバーを経由し、ロサンゼルス・エンジェルスからマリナーズへ移った。かつてエンジェルスでGMを務めていたジェリー・ディポートGMに、拾われた形だ。今シーズン、カワートは内野を守るだけでなく、マウンドにも上がる。高校時代のカワートは三塁手&投手だったが、再び登板するのは、野手として成功を収めていないからに他ならない。

 残る3人、ティム・ベッカムダスティン・アクリージェイ・ブルースがプロスペクトだったのは、少なくとも10年近く前のことだ。このオフ、ベッカムはボルティモア・オリオールズからノンテンダーとされ、マリナーズと1年175万ドル(+出来高)で契約した。求められている役割は、クロフォードが今シーズンも開花しなかった場合の遊撃手だ。マリナーズとっては「保険」――それも安価な――に過ぎない。アクリーは2年続けてメジャーリーグの試合に出場しておらず、エンジェルスのAAAで過ごした。10年前に全体2位で指名されたマリナーズへ戻ってきたが、得たのはマイナーリーグ契約だ。ノン・ロースター・インバイティ(招待選手)として、スプリング・トレーニングに参加する。

 ベッカムとアクリーと違い、ブルースは1巡目指名の評価にまずまず応え、300本塁打まであと14本に迫っている。とはいえ、再建を始めたばかりのマリナーズに、31歳のベテランはまったくそぐわない。しかも、2020年のオフにはFAとなる。ケレニックとダンとともに獲得したというよりは、トレードを成立させるために、マリナーズは引き取らざるを得なかったのだろう。このトレードについては、昨年12月に「ブロックバスター・トレードがもうすぐ成立するが、あのビッグ・ネームは主役ではなく、むしろお荷物!?」で書いた。

 もっとも、ブルースもマリナーズの再建に役立つかもしれない。マリナーズはブルースをトレードに出すことで、交換に若手を得られる。早ければ、今シーズンが始まる前に、ブルースはマリナーズからいなくなる。

 今オフにマリナーズが放出した主力のなかにも、ドラフト1巡目はいた。タンパベイ・レイズへ移ったマイク・ズニーノは、2012年にマリナーズから全体3位指名を受けた。また、パクストンは2010年の4巡目・全体132位だが、その前年に1巡目・全体37位で指名されている。この時はトロント・ブルージェイズとの交渉がまとまらず、独立リーグを経て、翌年のドラフトでマリナーズに指名され、そこから交渉に9ヵ月を要した後にようやく入団した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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