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日中にルーツを持つプロスペクトが受賞した「アリゾナ秋季リーグMVP」は今年の新人王も選ばれている

宇根夏樹ベースボール・ライター
オジー・オールビース(左)とロナルド・アクーニャJr. Aug 10,2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 各球団のプロスペクトがプレーする、アリゾナ・フォール・リーグ(アリゾナ秋季リーグ)のMVPに、ケストン・ヒウラ(ミルウォーキー・ブルワーズ)が選ばれた。23試合に出場し、打率.323、5本塁打、33打点、7盗塁。本塁打は1位(3人)より1本少ないだけで、打点は2位よりも6点多かった。

 昨年のドラフトで、ヒウラは全体9位指名を受け、カリフォルニア大アーバイン校からプロ入りした。父のカーク(カリフォルニア州生まれ)と母のジャニス(ハワイ州生まれ)は、それぞれ、日本と中国にルーツを持つ。

 昨年のアリゾナ・フォール・リーグMVP、ロナルド・アクーニャJr.(アトランタ・ブレーブス)は、今秋の日米野球で来日中、新人王に選ばれた。一昨年に受賞したグレイバー・トーレス(ニューヨーク・ヤンキース)は、新人王の投票で大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)とミゲル・アンドゥーハー(ヤンキース)に次ぐ3位に入った。

筆者作成
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 また、3年前に受賞したアダム・エンゲル(シカゴ・ホワイトソックス)は、昨シーズンの途中からセンターに定着し、今年8月には7日間に3本のホームランをもぎ捕った。その1本目は、4年前のアリゾナ・フォール・リーグMVP、グレッグ・バード(ヤンキース)が放った一打だった。

 その前の受賞者にも、ノーラン・アレナード(コロラド・ロッキーズ)とクリス・ブライアント(シカゴ・カブス)がいる。今シーズン、アレナードは3度目の本塁打王を獲得し、メジャーリーグ1年目からのゴールドグラブを6年連続とした。ブライアントは今シーズンこそ怪我に泣かされたが、2015年の新人王に続き、2016年はナ・リーグMVPを手にしている。

 もっとも、アリゾナ・フォール・リーグMVPの全員が、成功しているわけではない。なかには、メジャーデビューできなかった選手もいる。ちなみに、2009年に受賞したグラント・デスメイは、聖職者になることをめざし、2010年1月に球界を去った。現在は、アベ・マリア大のベースボール・チームでヘッド・コーチを務めていて、今シーズンは独立リーグでプレーもした。現在、32歳。2009年はAとA+の合計で30-30を達成した。

 ヒウラの将来は、まだわからない。プロ2年目の今シーズンは、A+とAAで計123試合に出場し、打率.293と出塁率.357、13本塁打、34二塁打、5三塁打、15盗塁(失敗11)を記録した。打撃と比べ、守備がウィークポイントのようだ。7月半ばにMLB.comのアダム・マッカルビーが発表した記事のなかで、チームメイトのルイス・オティーズ(7月末にボルティモア・オリオールズへ移籍)は、オジー・オールビース(ブレーブス)を思わせるバッティングだと語っている。オールビースは昨年8月にメジャーデビューし、今シーズンは正二塁手として、24本塁打、40二塁打、5三塁打を放った。

 他の球団からも、ヒウラは注目されている。今シーズンの途中には、マニー・マチャド(当時オリオールズ)やニューヨーク・メッツの2投手、ジェイコブ・デグロームノア・シンダーガードの交換要員として、名前が挙がっていた。ブルワーズが手放すかどうかはともかく、早ければ、来シーズンのメジャーデビューもありそうだ。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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