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DHはMVPになれない!? これまでの受賞者はゼロ、2位も4人だけ。今年はトップ3にも入れず

宇根夏樹ベースボール・ライター
左から、A.ロドリゲス、D.オティーズ、F.トーマス 28 Oct 2018(写真:Shutterstock/アフロ)

 今年もまた、DHがMVPに選ばれることはなかった。J.D.マルティネス(ボストン・レッドソックス)は、リーグ最多の130打点を挙げただけでなく、打率.330と長打率.629は2位、出塁率.402とOPS1.031は3位にランクインしたが、MVP投票では3位にすら入らなかった。受賞者の発表は11月15日だが、すでにトップ3は決まっている。ムーキー・ベッツ(レッドソックス)、ホゼ・ラミレス(クリーブランド・インディアンズ)、マイク・トラウト(ロサンゼルス・エンジェルス)の3人だ。MVPを手にするのは、J.D.のチームメイトだろう。

 これまで、DHの先発出場が他のどのポジションよりも多かったシーズンに、MVPを受賞した選手はいない(DHは1973年から)。過去の受賞者のうち、ドン・ベイラーフランク・トーマスの通算先発出場は、ポジション別に分けるとDHが最も多いが、MVPに選ばれたシーズンは他のポジションをメインとしていた。

 2位ですら、1993年のポール・モリター、2000年のトーマス、2005年のデビッド・オティーズ、2014年のビクター・マルティネスの4人だけだ。3位も、1991年のトーマス、1995年のエドガー・マルティネス、2006年のオティーズしかいない。

 2位のDH4人のうち、1位と最も僅差だったのは、2005年のオティーズだ。受賞したアレックス・ロドリゲスの331ポイントに対し、オティーズは307ポイント。ロドリゲスが1位(14ポイント)16票、2位(9ポイント)11票、3位(8ポイント)1票、オティーズは1位11票と2位17票を得た。ただ、彼らに次ぐポイントのブラディミール・ゲレーロに1位票を投じた記者が、ゲレーロではなくオティーズに入れていた場合でも、5ポイントしか増えないので(1位票が1増えて2位票が1減る)、ロドリゲスには届かない。

 今年、J.D.が3位にも入らなかったのは、守備も理由に挙げられる。DHとして93試合に先発した他、レフトとライトでも計57試合に出場。493.0イニングを守ってDRS-5とUZR-2.1を記録した。ちなみに、2005年のオティーズが守備についたのは、一塁手として10試合だった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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