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出場停止が終わっても、カノーは二塁には戻らない

宇根夏樹ベースボール・ライター
ロビンソン・カノー(シアトル・マリナーズ)Mar 31, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ロビンソン・カノー(シアトル・マリナーズ)の復帰が近づいてきた。

 禁止薬物の陽性反応により、カノーは5月15日に80試合の出場停止を科された。処分が明けるのは、8月14日。出場停止の最後の2週間は、マイナーリーグの試合に出場できる。マリナーズは8月6日に、カノーをAAAのタコマ・レイニアーズに送った。

 カノーの出場停止に伴い、ディー・ゴードンがセンターから二塁へ移り、センターにはギレルモ・ヘレディアが入った。前年まで、ゴードンはマイアミ・マーリンズの二塁手だった。

 復帰したカノーが二塁を守り、ゴードンがセンターへ戻れば、開幕当初と同じ布陣になる。けれども、二塁にはゴードンがそのままとどまる。7月末にマーリンズからキャメロン・メイビンを獲得し、ヘレディアに代えてセンターに起用しているのも、そのためだ。

 カノーの出場停止は、80試合だけではない。今年のポストシーズンにも出場できない。ゴードンをセンターへ戻した場合、マリナーズはポストシーズンで――たどり着ければの話だが――ゴードンを再び二塁へ動かさなければならない。ゴードンがそれを受け入れたとしても、適応という負担がかかる上、ルールを破った選手のために別の選手のポジションを何度も移動させるのはどうかという、道義的な疑問も生じる。

 母国のドミニカ共和国で一塁と三塁の守備練習をしてきたカノーは、8月6日のAAAの試合に「3番・一塁」として出場した。メジャーリーグのみならず、マイナーリーグでも一塁を守るのは初めてだ。メジャーリーグでは2013年に1イニングだけ遊撃を守った(守備機会なし)以外、すべて二塁だった。マイナーリーグでは遊撃と三塁も経験しているが、三塁手としての先発出場は1試合しかない。復帰後、一塁と三塁のどちらを守るにせよ、不安は拭えない。マリナーズのDHには、ネルソン・クルーズがいる。

 とはいえ、カノーのバッティングは一流だ。一塁手のライオン・ヒーリーと三塁手のカイル・シーガーは、ともにホームランこそ20本前後ながら、出塁率は2人とも3割に満たない。ポストシーズン進出が危うくなっているマリナーズは――これまでの経緯を考えると「救世主」と呼ぶのはふさわしくないにしても――カノーを必要としている。

 

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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