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7月のトレードで、日本人選手の交換要員となった若手たちの「その後」。上原浩治の交換相手は本塁打王に

宇根夏樹ベースボール・ライター
クリス・デービス(ボルティモア・オリオールズ)SEP 10, 2013(写真:ロイター/アフロ)

 日本人メジャーリーガーが動いた7月のデッドライン・トレードは、これまでに7件を数える。今夏はなさそうだが、昨夏はダルビッシュ有青木宣親が移籍した。

筆者作成
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 そのなかでも、交換相手が大きく羽ばたいたのが、上原浩治のトレードだ。当時、クリス・デービストミー・ハンターは、ともにメジャーリーグ4年目の25歳。まだ若いとはいえ、今ひとつ伸び悩んでいた。それが、デービスはトレードの翌年に33本塁打を放つと、2013年は53本、2015年は47本を叩き込み、本塁打王を2度獲得した。2012~16年の計197本塁打は、この5年間の全選手最多だ。ハンターは2013年から救援に専念し、2年続けて60登板以上&防御率2点台を記録した。

 現在、ハンターはフィラデルフィア・フィリーズで投げているが、デービスは今もボルティモア・オリオールズにいる。今シーズンはスラッシュライン(打率/出塁率/長打率)のいずれもリーグ・ワーストの大不振ながら、これまでの実績を考えれば、オリオールズは7年前のトレードで大当たりを引き当てたと言えよう。

 イチローと入れ替わった2人のうち、D.J.ミッチェルが移籍後にメジャーリーグで投げることはなかったが、ダニー・ファークワーは250試合に登板している。トレードの翌年は8月からクローザーを務め、翌々年は66登板で防御率2.66を記録した。現在はシカゴ・ホワイトソックスに在籍。先月、「脳出血で倒れた投手が「マウンド」へ戻ってきた。その投手はイチローが移籍した時の交換相手」で書いたように、現在は故障者リストに入っているものの、すでに練習を開始。ヘルメットをかぶって投げる映像を、自身のインスタグラムにアップしている。

 井口資仁福留孝介の交換要員は、誰もメジャーリーガーになれなかった。アブナー・アブレイユは来日し、埼玉西武ライオンズ、高知ファイティングドッグス、読売ジャイアンツに在籍。埼玉西武では一軍へ昇格し、7試合に出場した。

 ダルビッシュと交換に移籍した3人のなかで、ウィリー・カルフーンはトレードの1ヵ月半後にメジャーデビューした。ホームランは1本きりだが、打った相手はジャスティン・バーランダー(ヒューストン・アストロズ)だ。今シーズンはAAAへ戻り、再び打率3割台を記録している。前年は31本のホームランが8本にとどまっているのは、力任せのプル・ヒッティングからの脱却を図っているためか。二塁打28本はすでに前年を上回る。いつ、メジャーリーグへ再昇格してもおかしくない。他の2人はカルフーンより3歳若く、まだ20歳だ。

 大家友和と青木は、若手ではなくベテランと交換された。大家の場合は、ともに移籍したリッチ・ランドルスと大家自身が若手だった。当時の年齢は20歳と25歳。ランドルスのメジャーデビューはトレードの7年後と遅く、通算9登板に終わった。大家もランドルスも2009年はクリーブランド・インディアンズに在籍し、メジャーリーグでは入れ違ったものの、傘下のAAAでは継投した試合もあった。

 青木はテオスカー・ヘルナンデスに付随する形で移籍し、1ヵ月経たずに40人ロースターから外され、解雇(青木側のリクエストだと思われる)となった。ヘルナンデスは9月にホームランを8本放ち、今シーズンの前半戦は15本を記録している。三塁打6本と二塁打20本を合わせた長打41本は、トロント・ブルージェイズで最も多い。

 ヘルナンデスやカルフーンは、将来、夏のトレードで若手たちと入れ替わりに移籍するかもしれない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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