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大谷翔平が復帰すれば、エンジェルスは巻き返してポストシーズンにたどり着けるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
左から、大谷翔平、K.カルフーン、M.マルドナード May 23, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 打者としてだけでも、大谷翔平が復帰すれば、ロサンゼルス・エンジェルスには大きなプラスになるだろう。大谷を除くと、左打者はルイス・バルブエナコール・カルフーンしかおらず、どちらのOPS(出塁率+長打率)も、前年と比べて100ポイント以上も低い。念のために言っておくと、昨シーズンのOPSは2人ともキャリア・ベストではなかった。

 ただ、大谷が戻ってきても、たとえそれが打者と投手の両方であっても、エンジェルスがここから浮上してポストシーズンへ進出するのは、かなり厳しい。

 エンジェルスは現在、勝率.506(43勝42敗)を記録している。例年であれば、まだまだポストシーズン進出を狙える勝率だ。例えば、昨シーズンの場合、ア・リーグのワイルドカード2枠目をゲットしたミネソタ・ツインズは、勝率.511(45勝43敗)でオールスター・ブレイクを迎えた。ナ・リーグ中地区優勝のシカゴ・カブスは、勝率.489(43勝45敗)で折り返した。

 ところが、今シーズンのア・リーグは事情が異なる。東地区はボストン・レッドソックスとニューヨーク・ヤンキースが勝率.660以上で突っ走り、西地区ではヒューストン・アストロズとシアトル・マリナーズが勝率.630を超えている。エンジェルスとワイルドカード2枠目にいるマリナーズは(間に2チームを挟み)、11ゲームもの差がある。

 マリナーズはここから勝率.494(38勝39敗)でも、シーズン92勝となる(当然ながら、東地区の2チームとアストロズの白星は、同じ勝率ならもっと多くなる)。それに対し、エンジェルスが92勝に達するには、勝率.636(49勝28敗)が必要だ。不可能ではないとはいえ、ハードルは極めて高い。マリナーズかアストロズ、あるいは東地区2チームのどちらかが急降下しない限り、エンジェルスはポストシーズンに手が届かないだろう。

 その上、エンジェルスでは、故障者が続出している。トレードで補強するにしても、そのポイントは一つではない。先発投手陣とブルペンは頭数が足りず、三塁手のザック・コザートは左肩の故障により、今シーズンはもうプレーできない。

 シーズン終了後には、先発投手のギャレット・リチャーズ、二塁手のイアン・キンズラー、捕手のマーティン・マルドナードらがFAになる。この点からすれば――マイク・ソーシア監督も10年契約の最終年だ――勝負に出たいところだが、補強に動いてもポストシーズンにたどり着ける可能性は低く、交換にプロスペクトを手放せば、将来に支障をきたすことになりかねない。むしろ、FA直前の選手を放出し、来シーズン以降の布陣を整えることが、2014年を最後に遠ざかるポストシーズンへ向かう、最短ルートではないだろうか。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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