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殿堂入り間違いなしのスラッガーが、8年ぶりにかつての本拠地へ帰ってくる

宇根夏樹ベースボール・ライター
アルバート・プーホルス June 5, 2003(写真:ロイター/アフロ)

 ロサンゼルス・エンジェルスのアルバート・プーホルスは、メジャーデビューした2001年から2011年まで、セントルイス・カーディナルスでプレーした。11年間に2073安打、445本塁打、455二塁打。本拠地の新旧ブッシュ・スタジアムでは、1020安打、204本塁打、249二塁打を記録した。首位打者、本塁打王(2度)、打点王に加え、3度のMVPと2度のワールドチャンピオンも、すべてカーディナルス時代だ。

 ただ、2011年のオフにエンジェルスへ移ってから、プーホルスは一度もブッシュ・スタジアムでプレーしていない。カーディナルスはナ・リーグ中地区、エンジェルスはア・リーグ西地区のチームだ。両チームは2013年と2016年に3試合ずつ対戦し、プーホルスは6試合とも出場したが、球場はいずれもエンジェル・スタジアムだった。

 デリック・グールド(セントルイス・ポスト-ディスパッチ)のツイートによると、今からちょうど1年後、来年6月に、エンジェルスはブッシュ・スタジアムでカーディナルスと3試合を行う予定だという。まだ確定はしていないらしいが、実現すれば、プーホルスにとっては8年ぶりのブッシュ・スタジアムとなる。

 それまでに、プーホルスが移籍することはないだろう。現在の契約は2021年まで残っている。史上4人目の3000安打&600本塁打――600二塁打を加えれば、ハンク・アーロンに続く史上2人目――を達成し、将来は間違いなく殿堂入りするとはいえ、現在の力量からすると、エンジェルスがトレードを試みたとしても、獲得に乗り出す球団があるとは思えない。また、プーホルスはトレードに対する拒否権を持つ。

 2011年のオフにカーディナルスからFAとなったプーホルスは、エンジェルスと10年2億4000万ドルで契約した。この年の春、プーホルスはカーディナルスが提示した延長契約を断っている。チームメイトのマット・ホリデイが、プーホルスを残留させる資金に充ててほしいと、自身の年俸の繰り延べ払いを申し出る一幕もあった。

 カーディナルスを退団することになったのは、プーホルスが大型契約を求めただけではなく、カーディナルスが深追いしなかったのも理由だが、セントルイスにはプーホルスを批判する者もいた。あるファンは、プーホルスのレプリカ・ジャージの背番号「5」に縦線を2本入れ、$(ドル)に見立てた。レストランのオーナーは、店名を「プーホルス5ウエストポート・グリル」から「セントルイス・スポーツ・ホール・オブ・フェイム・グリル」に変えた。

 けれども、セントルイスへ「帰還」したプーホルスは、盛大なスタンディング・オベーションで迎えられるだろう。かつてカーディナルスでプレーした田口壮が、フィラデルフィア・フィリーズの選手としてブッシュ・スタジアムへやってきた時もそうだった。

 プーホルスの退団後、カーディナルスで背番号「5」のユニフォームを着た選手はいない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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