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メッツが通算317本塁打のベテランを解雇。次はイチローより多くの盗塁を決めているあの選手か

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホゼ・レイエス(左)とエイドリアン・ゴンザレス May 29, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 6月11日、ニューヨーク・メッツはエイドリアン・ゴンザレスを解雇した。

 ゴンザレスは2000年のドラフト全体1位だ。これまでに2050安打、317本塁打、437二塁打を記録。オールスター・ゲームに5度選ばれ、一塁の守備ではゴールドグラブを4度受賞した。

 もっとも、ゴンザレスは5月に36歳を迎えた。全盛期はとうに過ぎている。昨年12月にロサンゼルス・ドジャースからアトランタ・ブレーブスへ移ったトレードも、両チームの目的は年俸総額の調整にあった。ゴンザレスはトレードの2日後に解雇され、その1ヵ月後にメッツへ入団。ブレーブスからは2000万ドル以上を手にするものの、メッツとの契約は54万5000ドルに過ぎなかった。これは、メジャーリーガーの最低保障年俸だ。また、今シーズンは54試合で打率.237、出塁率.299、6本塁打。メッツにとって、ゴンザレスは「思わぬ拾いもの」にはならなかった。新たな球団が見つからないまま、キャリアを終える可能性もある。

 メッツは開幕12試合で11勝を挙げたものの、その後は17勝33敗と大きく負け越している。それもあって、ベテランの解雇はゴンザレスだけで終わりそうにない。噂が出ているのは、ゴンザレスが解雇された日に35歳となったホゼ・レイエスだ。

 盗塁王は3度、リーグ最多三塁打は4度を数え、514盗塁と128三塁打は現役最多。今シーズンが始まる前の512盗塁と128三塁打も、イチロー(509盗塁、96三塁打)を上回っていた。ESPNのマイク・マッゼロが7年前に発表した記事によれば、当時、ニューヨーク・ヤンキースでプレーしていたアレックス・ロドリゲスは、レイエスを「最もエキサイティングな選手」と評したという。

 だが、今シーズンは43試合で打率.149、出塁率.213、1本塁打、0三塁打、2盗塁。ニューヨーク・ポストやニューズデイなどが、メッツはレイエスの解雇を検討中と報じている。

 ニューヨーク・ポストのマイク・プーマによると「メッツはレイエスを正しく送り出したいと思っている」という。レイエスとメッツの関係は、イチローとシアトル・マリナーズの関係に似ている。イチローが長年プレーしたマリナーズへ復帰したのと同様に、レイエスはメッツでキャリアをスタートさせ、スーパースターとしての地位を築き、FAとなって退団後、3球団(とDVに起因する解雇)を経て、メッツへ戻ってきた。レイエスがメッツで記録した405盗塁と110三塁打は球団史上最も多く、1502安打と261二塁打はデビッド・ライト(1777安打、390二塁打)に次ぐ。レイエスにプレーを続ける気があれば別だが、メッツはゴンザレスのように解雇するのではなく、引退会見あるいはセレモニーを催したいと考えているのだろう。

 個人的には、レイエスにはまだ引退してほしくない。かつて、メッツで併殺デュオを組んだ松井稼頭央(埼玉西武ライオンズ)は今もプレーしていて、レイエスよりも7歳上だ。松井は今シーズン、プロ生活を始めた球団へ戻った。

 もう一人、メッツには37歳のホゼ・バティスタもいる。「2010年代最多のホームランを打っているスラッガーが、ようやく浪人生活から脱出」で書いたとおり、バティスタは4月19日にブレーブスと契約したが、5月20日に解雇され、その2日後にメッツと契約した。こちらも最低保障年俸だ。メッツ入団後の成績をブレーブスにいた時と比べると、打率と出塁率は上向いているものの、肝心のホームランはまだ出ていない(ブレーブスでは2本)。故障中のヨエニス・セスペデスが復帰すれば、いつ解雇されてもおかしくない。

 レイエスと同じく、バティスタもメッツに在籍するのは2度目だが、メッツのユニフォームを着るのは今回が初めてだ。バティスタは2004年の夏にカンザスシティ・ロイヤルズからメッツへ移ってきて、数時間後に再びトレードでピッツバーグ・パイレーツへ去っていった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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