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走者追い越しによる幻のホームランが、過去にはベーブ・ルースに本塁打王をもたらしたことも

宇根夏樹ベースボール・ライター
デベン・マレーロ/幻の本塁打を放ったスウィング April 14, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 4月14日、デベン・マレーロ(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)が4回表に放った打球は、レフトのフェンスを越えた。だが、相手チームがチャレンジを要求し、その結果、マレーロは一塁走者を追い越したと判定された。ホームランは取り消され、マレーロはアウトに。記録は、打点つきのシングル・ヒットとなった。

 このプレーは、日本のメディアでも取り上げられた。マレーロは、オリックス・バファローズのクリス・マレーロと従兄弟同士だ。オリックスのマレーロは、昨シーズン、ホームベースを踏まずにホームランを取り消された。平野佳寿はオリックスとDバックスで、どちらの椿事にもチームメイトとして立ち会った。

 走者追い越しによるホームランの取り消しは、メジャーリーグでは2年ぶりのことだ。前回は2016年5月9日に、J.T.リアルミュート(マイアミ・マーリンズ)が走者を追い越した。この時、チャレンジを求めたクレイグ・カウンセル監督(ミルウォーキー・ブルワーズ)にとっては、まさに「リプレー」となった。約1ヵ月前の4月14日、奇しくもマレーロによる幻のホームランのちょうど2年前に、カーディナルスのランダール・グリチック(現トロント・ブルージェイズ)が走者を追い越した時も、カウンセル監督はダグアウトにいた。けれども、気づくのが遅かったため、ホームランを取り消すことはできなかった。グリチックのホームランも、リアルミュートの幻のホームランも、ウィリー・ペラルタ(現カンザスシティ・ロイヤルズ)が打たれた。

 また、1931年4月26日には、ルー・ゲーリッグも走者を追い越している(捕球されて3アウトになったと思った走者が、ダグアウトへ向かった)。この年、ゲーリッグが放った46本塁打は、チームメイトのベーブ・ルースと並び、リーグで最も多かった。ゲーリッグのホームランが幻になっていなければ、ルースは1本差の2位だった。

 マレーロの走者追い越しが、本塁打王のタイトルに影響することはないだろう。マレーロはメジャーリーグとマイナーリーグを合わせても、年に8本以上のホームランを打ったことがない。もっとも、この点からすると、取り消されたホームランのもったいなさは、ゲーリッグよりもマレーロが上だ。ゲーリッグは通算493本塁打を放った。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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