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3日間に2度移籍し、出ていった球団へ戻ってきた選手。A→B→Aと往復

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケニー・バーガス(ミネソタ・ツインズ)Jun 20, 2017(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 3日間に2度移籍し、出ていった球団へ戻ってきた選手がいる。

 3月16日、ミネソタ・ツインズはケニー・バーガスを40人ロースターから外した。バーガスのマイナーリーグ・オプションは切れているので、ウェーバーにかけなければならない。他球団に獲得される可能性があるということだ。それは現実となり、3月22日にシンシナティ・レッズがバーガスを獲得した。そして、レッズはバーガスをAAAへ送るため、ウェーバーにかけた。すると、今度はツインズがバーガスを獲得した。バーガスがツインズへ戻ったのは、レッズに移ってから2日後、3月24日のことだった。

 ツインズがバーガスをロースターから外したのは、ニューヨーク・ヤンキースから獲得したジェイク・ケイブを入れるためだ。すでに40人の枠は埋まっており、1人を加えるには1人を除く必要があった。バーガスは一塁しか守れないが、ツインズの一塁にはジョー・マウアーがいる。その上、オフにローガン・モリソンが加わり、DHの座も埋まった。

 とはいえ、バーガスのパワーは折り紙付きだ。スタットキャストの計測データによると、昨シーズン、ツインズの選手が記録した全ホームランの飛距離トップ2は、バーガスのバットから飛び出した。この2本の飛距離は、メジャーリーグ全体でも5位と18位に位置する。ニックネームの「リトル・パピ」は、「ビッグ・パピ」と呼ばれたデビッド・オティーズにちなむ。

 ツインズでは3月18日に、ホルヘ・ポランコが薬物違反で80試合の出場停止を科された。これにより、ロースターに空きができたツインズは、バーガスを取り戻す機会を逃さなかった。

 バーガスにしてみれば、新天地でチャンスを得たいところだろうが、レッズにいたなら、状況はさらに悪化していた。一塁手のジョーイ・ボトーは、過去3年とも150試合以上に先発出場し、OPS.980以上を記録している。また、レッズが属するナ・リーグにはDHがない。レッズがバーガスを獲得したのは、控えとしてよりも、万が一の事態、ボトーが長期欠場せざるを得なくなった場合に備えてだったと思われる。バーガスをAAAでプレーさせようとしたことが、その意図を物語る。

 ツインズに呼び戻されたバーガスだが、開幕ロースター入りは確定しておらず、再びウェーバーにかけられる可能性は高い。その際、レッズは再び獲得に動くのか。それとも、レッズ以外の球団が名乗り出て、バーガスを手に入れるのだろうか。あるいは、どの球団からもスルーされ、ツインズ傘下のAAAで開幕を迎えるかもしれない。

 オティーズはドミニカンの左打者、バーガスはプエルトリカンのスイッチ・ヒッターだが、2人ともパワフルな一塁手&DHというだけでなく、ツインズで開花できずにいる点も共通する。オティーズは2002年12月にツインズから解雇され、翌年1月にボストン・レッドソックスと契約した。当時のオティーズの年齢は、現在のバーガスと同じ27歳だった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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