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自身の卒業式に出席するため、エースがチームを離れる。息子や娘の卒業式に出る監督は少なくないが…

宇根夏樹ベースボール・ライター
マーカス・ストローマン(トロント・ブルージェイズ)May 11, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

今週末、トロント・ブルージェイズはテキサスにいるが、そこにエースの姿はない。マーカス・ストローマンはチームと別行動をとり、5月15日に行われるデューク大の卒業式に出席する。

4年制の大学を卒業しているメジャーリーガーは少ない。3年生でドラフト指名され、プロ入りするケースが多いためだ。少し古いが、2012年5月にFOXスポーツのジョン・モロシが発表した記事には、開幕以降に出場した選手のうち、4年制の大学を終えているのは4.3%に過ぎないとある。

なかには、カーティス・グランダーソン(ニューヨーク・メッツ)やポール・ゴールドシュミット(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)のように、プロ入りしてから足りない単位を修得し、学位を取る選手もいる。ストローマンは昨年のスプリング・トレーニング中に左膝の靭帯を損傷し、手術後のリハビリ中に社会学の学位を取得した。ただ、シーズン中に行われる卒業式にも出席するのは、例外中の例外だ。

もっとも、選手ではなく監督やコーチが、息子や娘の卒業式に立ち会うため、チームを離れるケースは見かける。シカゴ・ホワイトソックスのロビン・ベンチュラ監督は、過去3年ともそうしている。一昨年はロサンゼルス・エンジェルスのマイク・ソーシア監督も娘の卒業式に出席し、代わってベンチ・コーチが采配を揮った。

息子や娘を持つ監督としては、こちらが例外かもしれない。4年前のことだ。ダイヤモンドバックスの監督だったカーク・ギブソンは、息子キャム(キャメロン)の高校の卒業式に出ず、試合の指揮を執った。卒業するのは当然だから、というのが理由だ。

卒業証書を手にしたキャムは、右肘を後ろに引くポーズで自らを祝福した。父が1988年のワールドシリーズで代打サヨナラ本塁打を放った時、ベースを回りながら見せた、あの有名なガッツポーズだ。キャムは1994年生まれで、右投げ左打ちの外野手という点は父と共通しているが、ルックスは母に似ている。

キャムはこの年のドラフトでダイヤモンドバックスから38巡目・全体1173位指名を受けたが、父の母校であるミシガン州立大へ進んだ。そして昨年、5巡目・全体160位指名でデトロイト・タイガースに入団した。現在は、ウエストミシガン・ホワイトキャップス(A)でプレーしている。背番号は、父がタイガースとロサンゼルス・ドジャースでつけていたのと同じ「23」だ。父は昨年4月にパーキンソン病を患っていることを発表したが、今もタイガースの試合で解説者を務めている。

なお、ストローマンは5月11日に投げていて、次の登板は5試合後の5月17日が予定されている。卒業式に出るものの、登板をずらしたり、スキップするわけではない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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