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これぞ頭脳プレー。平凡なフライをわざと捕らなかったのは、かつて古巣のシーズン全敗を願ったあの二塁手

宇根夏樹ベースボール・ライター
カイル・ライアン(左)とイアン・キンズラー Apr 8, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

デトロイト・タイガースのイアン・キンズラーが、4月17日のヒューストン・アストロズ戦で頭脳的なプレーを演じた。

無死一塁の場面。二塁手のキンズラーは平凡なフライに対し、グラブを上げて捕球態勢に入った。だが、ボールはキンズラーのグラブには触れず、その手前に落ちた。バウンドしたボールを拾ったキンズラーは、二塁ベース上の遊撃手にトス。一塁走者が封殺され、打者は一塁に生きて1死一塁となった。

そのままフライを捕球しても、状況は同じく1死一塁だった。ただ、スピードという点で、打者のタイラー・ホワイトは一塁走者のコルビー・ラスマスに劣る。キンズラーによる走者の入れ替えは功を奏し、続く打者がヒットを打ったものの、ホワイトは二塁でストップした。タイガースは後続を断ち、この回を無失点で切り抜けた。

インフィールド・フライのルールが適用されるのは、無死もしくは1死で一、二塁か満塁の場面だけだ。このプレーは故意落球のルールにも該当しない。キンズラーがボールをグラブに当てて落球したのではないからだ。

キンズラーは2013年のオフにテキサス・レンジャーズからタイガースへトレードされ、翌年のスプリング・トレーニング中に論議を呼ぶ発言をした。ESPNマガジンのロベルト・サンチェスに向かって「162敗してほしい」と古巣レンジャーズのシーズン全敗を願い、ジョン・ダニエルズGMも批判した。この発言と違い、今回のプレーに批判の余地はない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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