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マエケンの前にデビュー戦で本塁打を打ったドジャースの投手は、もう一つの「史上初」でも球史に名を残す

宇根夏樹ベースボール・ライター
前田健太(ロサンゼルス・ドジャース)JANUARY 7, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

ロサンゼルス・ドジャースからメジャーデビューした前田健太は、6回を無失点に抑えただけでなく、ホームランも放った。デビュー戦で本塁打を打ったドジャースの投手は2人目だ。マエケンの69年前に本塁打を記録した投手は、それ以外のことでもMLBの歴史に名前を刻んでいる。

1947年8月26日の2回表。0対4とリードされた無死一、二塁の場面から、ダン・バンクヘッドはマウンドに上がった。そして、2回裏に巡ってきた打席で、ホームランを打った。ジャッキー・ロビンソンがメジャーデビューし、人種の壁を破った年のことだ。ロビンソンはこの試合にも、ブルックリン・ドジャースの「2番・一塁」として出場している。ロビンソンが20世紀以降「初の黒人選手」であるのに対し、バンクヘッドは「初の黒人投手」となった。ドジャースがバンクヘッドと契約する過程には、スカウトを務めるジョージ・シスラーも関わっていた。

快速球とスクリューボールをメイン・ピッチとするバンクヘッドは、ボブ・フェラーと比較されるほど期待されており、ニグロリーグ時代には「ネクスト・ペイジ」の呼び声もあったという。バンクヘッドの翌年に40代でメジャーデビューしたサチェル・ペイジのことだ。だが、バンクヘッドは1947年に4登板した後、1950年は41試合に投げたものの、1951年の7登板を最後にメジャーリーグから姿を消した。通算防御率は6.52。制球難が解消できなかった。

2004年にイチローがシーズン最多安打記録を樹立した時、それまで記録を保持していたシスラーが注目されたように、前田のホームランによって、バンクヘッドにもわずかながらスポットライトが当たった。これは、素晴らしいことだと思う。シスラーやロビンソン、フェラーやペイジと違って、バンクヘッドは殿堂入りしていない。告白すると、私もこれまでバンクヘッドのことを知らなかった。映画『42』でも、彼については描いていなかった気がする。1947年にメジャーデビューした黒人選手は5人いるが、投手はバンクヘッドしかいない。また、野手4人のうち、ハンク・トンプソン以外の3人、ロビンソン、ラリー・ドビー、ウィラード・ブラウンは殿堂入りしている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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