前田健太はドジャースでフル回転しても出来高ゼロの可能性あり

前田健太(ロサンゼルス・ドジャース) JANUARY 7, 2016(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

 ロサンゼルス・ドジャースに入団した前田健太について、先日、ある人と話していた時のことだ。私が「あの契約だと、ドジャースは出来高ゼロのままマエケンをフル回転させられますね」と言うと、その人は「まさか、そんなはずはないでしょう」と返した。

 前田はドジャースと、年俸300万ドル+インセンティブ(出来高)の8年契約を交わした。インセンティブ(出来高)をすべてクリアすると、その年は1315万ドル(300万ドル+1015万ドル)を手にする。出来高は「開幕ロースター」「先発登板数」「イニング」によって決まる。その内容は「前田健太がドジャース入団。8年2500万ドルながら、最高で1億620万ドルとなる契約の内訳はこうだ」で記した。

 まず、開幕時の25人ロースターから漏れるか、故障者リスト(DL)入りして開幕を迎えると、前田は「開幕ロースター」の出来高をもらい損ねる。昨シーズン、31試合に先発登板したクリス・ヘストン(サンフランシスコ・ジャイアンツ)は、初登板がチーム3試合目、最終登板は160試合目だった。けれども、ヘストンは開幕ロースターには入っておらず、開幕直後にDL入りしたマット・ケインの穴埋めとしてAAAから昇格した。また、クリス・ブライアント(シカゴ・カブス)はエキシビション・ゲーム(オープン戦)で全選手最多の9本塁打を打ちながら、4月16日まではAAAでプレーした。これは、ブライアントがFAになるのを1年遅らせるためだ。ブライアントはメジャーリーグで151試合に出場して26本塁打を放ち(その前にAAAの7試合で3本塁打)、新人王を受賞した。

 さらに、前田がシーズンを通してリリーフとして投げた場合は、「先発登板数」の出来高を得られないのはもちろん、「イニング」の出来高も手にすることは難しい。最初のハードルは90イニング(25万ドル)だが、2008年以降の8年間に救援登板だけで90イニングを投げた投手が3人いたシーズンは一度もなく、2015年はデリン・ベタンセス(ニューヨーク・ヤンキース)の84.0イニングが最多だった。ちなみに、救援100イニング以上は2006年のスコット・プロクター(ヤンキース)を最後に途絶えている。前田が「スウィングマン」として投げたとしても、先発8登板で計48イニング(平均6イニング)、救援40登板で計40イニングであれば、「先発登板数」と「イニング」の出来高はゼロのままだ。「先発登板数」の出来高は15先発から発生する。

 出来高の支払いを避けるためだけに、ドジャースが前田を開幕ロースターから外すことはないだろうし、救援に回したり、イニングを制限するとも思えない。ただ、ドジャースには先発投手が数多くいる。故障がない限り、ローテーションの2枠はクレイトン・カーショウスコット・キャズミアーで決まりだ。残るは3枠。ブレット・アンダーソン、前田、ヒョンジン・リュ(柳賢振)、アレックス・ウッドの4人だけでなく、他にもブランドン・ビーチーマイク・ボルシンガーら、候補は少なくない。フランキー・モンタスのような若手もおり、1月半ばにはキューバンのヤシエル・シエラと6年3000万ドルの契約――前田の契約は出来高を除くと8年2500万ドルだ――を交わしたという。シーズン半ばにはブランドン・マッカーシーも復帰する予定だ。

 前田が野手としてフル出場して出来高ゼロという事態は、いくら打撃も良いとはいえ、あり得ないだろう。だが、リリーフ起用の可能性はないとは言えない。上原浩治(ボストン・レッドソックス)と違い、前田が日本プロ野球でリリーフとしてシーズンを過ごしたことはないが、先発からリリーフに転向したメジャーリーガーは少なくない。現在はクローザーのアロルディス・チャップマン(ヤンキース)も、キューバ時代は先発を務めていた。また、岩隈久志(シアトル・マリナーズ)はメジャーリーグ1年目の7月から先発しているが、それまでの14登板はリリーフだった。