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孫がいる40歳のカムバックや、ワールドシリーズでメジャーデビューは実現? 今年書いた記事の「その後」

宇根夏樹ベースボール・ライター
ラウル・モンデシー(右)OCTOBER 30, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

2015年も終わろうとしている今、書き散らかしたままの記事が結構多いことに気がついた。あの選手やこの記録の「その後」はどうなったのか。改めて調べてみると、意外な展開もいくつかあった。

●2015年の初夢――カブスが107年ぶりにワールドシリーズ優勝!!(2015年1月1日)

シカゴ・カブスが「山羊の呪い」を解き、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」で描かれたように107年ぶりのワールドシリーズ優勝を飾ることはなかった。だが、7年ぶりにポストシーズン進出を果たし、オフにはジェイソン・ヘイワード、ベン・ゾブリスト、ジョン・ラッキーと契約した。2016年のワールドシリーズ優勝予想では「Sportsbook.ag」など複数のブックメーカーから、最も低いオッズをつけられている。

●孫もいる40歳のサウスポーが、4年ぶりのメジャーリーグ復帰をめざす(2015年2月16日)

マーク・ヘンドリクソンのメジャーリーグ復帰はならず、3月半ばにボルティモア・オリオールズから解雇され、月末に引退を表明した。スプリング・トレーニングでは4登板し、計3.1回を投げて6失点。ボルティモア・サンのエデュアルド・エンシーナによれば、ヘンドリクソンはオリオールズのコーチ就任やフロント・オフィス入り、あるいはプロゴルファー転身も考えているとのことだったが、今のところ、動きは見られない。ヘンドリクソンは6月に41歳を迎えた。

●試合時間を短縮するための新ルールが施行される。4年ぶりの平均2時間台はなるか(2015年2月21日)

MLBが発表した「2015 Official Averages」によれば、延長戦を除いた1試合平均は2時間56分だった。ただ、スタッツ社は、同じ平均時間ながら、前半戦の2時間53分に対し、後半戦は3時間00分と伝えている。新ルールの効果を判断するには、今後の推移を見守る必要があるようだ。

●黒田博樹がメジャーリーグからいなくなったことを、あのスラッガーは喜んでいる!?(2015年2月22日)

過去3年間、黒田博樹に打率.133(15打数2安打)&OPS.267と抑えられていたジョシュ・ドーナルソン(トロント・ブルージェイズ)はMVPに輝き、打率.120(25打数3安打)&OPS.305だったネルソン・クルーズ(シアトル・マリナーズ)はキャリアハイの44本塁打を放った。とはいえ、これらは黒田がいなくなったことと関係があるとは言い難い。クルーズは2014年も40本塁打を記録している。

●2003年のナ・リーグ新人王、Dトレインが2度目の引退。同年のア・リーグ新人王はどこへ(2015年3月15日)

4月半ば、ドントレル・ウィリスはFOXスポーツの解説者として、新たなキャリアを歩み始めた。

●オリオールズがリーチをかけているア・リーグ初の記録。達成は来シーズンへ持ち越される可能性も(2015年3月19日)

ア・リーグの本塁打王は3年続けてボルティモア・オリオールズの選手が獲得したが、クリス・デービスが2年ぶりにタイトルを奪還したため、ア・リーグ初の記録はならず。けれども、達成の可能性は2016年に持ち越された。なお、デービスは現在FA(12月26日時点)。オリオールズとは再契約の交渉を行っているようだ。

●ダルビッシュの故障とともにレンジャーズの2015年は開幕を迎える前に終わりを告げた……のかもしれない(2015年3月20日)

この記事は、テキサス・レンジャーズを応援する人々の不興を買っただけでなく、大外れに終わった。レンジャーズは3年ぶりのポストシーズン進出のみならず、4年ぶりの地区優勝も成し遂げた。ただ、チーム防御率は前半戦が4.22(リーグ13位)で、コール・ハメルズが加わった後半戦も4.29(9位)だった。

●2015年の鉄人記録。フィルダーに続いてペンスの連続試合出場も途切れ、ロンゴリアが継続中のトップへ(2015年3月22日)

エバン・ロンゴリア(タンパベイ・レイズ)は5月7日の試合を欠場し、連続先発出場は198試合、連続出場は270試合で途切れた。風邪のような症状だったという。現在、継続中のトップはマニー・マチャド(ボルティモア・オリオールズ)。両リーグで唯一人、全試合に出場し、連続先発出場も連続出場も162試合としている。

●クルーズが5試合連続ホームラン。史上最長まではあと3試合だが、そこには元広島のルイスが立ちはだかる(2015年4月17日)

ネルソン・クルーズ(シアトル・マリナーズ)は4月17日の試合で3安打を放ったものの、いずれもシングルに終わり、6試合連続ホームランはならなかった。だが、7月31日から8月4日にかけて、再び5試合連続ホームランを記録した。シーズン2度の5試合連続ホームランは、2008年のチェイス・アトリー以来のことだ。

●ジャイアンツのマギーがロースター外に。2014年のカムバック賞に続き、再び返り咲くことはできるのか(2015年5月25日)

ケーシー・マギーがサンフランシスコ・ジャイアンツ傘下のAAAでプレーした期間は短く、6月上旬に昇格した。しかし、月末に再びロースターから外され、7月上旬に解雇となった。直後に入団したマイアミ・マーリンズではさらに打てず、60試合で打率.182、出塁率.250、0本塁打、7二塁打。オフにFAとなっており、12月26日の時点で動きはない。

●シャーザーがノーヒッターを達成。1安打完封に続いてあわや完全試合とくれば、次の登板は……。(2015年6月21日)

1安打完封とノーヒッターに続いて完全試合とはいかなかったものの、マックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)は6月26日のフィラデルフィア・フィリーズ戦でも快調に飛ばし、6回1死まで打者16人をパーフェクトに抑えた。シャーザーは10月3日のニューヨーク・メッツ戦で、再びノーヒッターを達成。この時、背負った走者は三塁手のエラーによる1人だった。

●クリス・セールは次の登板でペドロ・マルティネスの記録を塗り替える!? さらに300奪三振の可能性も(2015年7月3日)

クリス・セール(シカゴ・ホワイトソックス)は7月6日のトロント・ブルージェイズ戦で完投したが、奪三振は6にとどまり、9試合連続2ケタ奪三振はならなかった。シーズン奪三振は274。セールではなく、クレイトン・カーショウ(ロサンゼルス・ドジャース)が301三振を奪った。

●ドジャースの投手が競演。グレインキーは43.2イニング無失点、カーショウは29イニング無失点を継続中(2015年7月25日)

ロサンゼルス・ドジャースの2投手、ザック・グレインキーの連続無失点は45.2イニング、クレイトン・カーショウは37イニングで途切れた。これらはドジャース史上3位と5位の長さ。同じシーズンにチームメイトがそれぞれ35イニング以上の連続無失点は、1908年にシカゴ・カブスで投げたモーデカイ・ブラウンとエド・ロイルバック以来だった。グレインキーはこのオフ、6年2億650万ドルでアリゾナ・ダイヤモンドバックスと契約。ドジャースとDバックスは同じナ・リーグ西地区なので、2016年はカーショウとグレインキーの投げ合いが見られそうだ。

●ヤンキースのスイッチ・ヒッターが打ち立てた、本塁打にまつわる2つのマイルストーン(2015年8月2日)

マーク・テシェーラ(ニューヨーク・ヤンキース)は自打球を右足に当てて骨折し、8月下旬から欠場。通算400本塁打まであと6本を残した。一方、ニック・スウィッシャー(アトランタ・ブレーブス)は8月22日に両打席本塁打を放ち、再びテシェーラに追いついた。

●全員ルーキーの先発ローテーション。1世紀以上も昔のメジャーリーグ記録に並び、更新も確実(2015年9月11日)

シンシナティ・レッズのルーキーたちによる先発登板は、途切れることなくシーズン最終戦まで続いた。

●アトリーのスライディングは珍記録も生む? レギュラーシーズンより先にポストシーズンでメジャーデビュー(2015年10月14日)

マット・レイノルズ(ニューヨーク・メッツ)はディビジョン・シリーズでもリーグ・チャンピオンシップ・シリーズでも出場せず、ワールドシリーズではロースターから外れ、代わりにホアン・ウリベイが入った。一方、ワールドシリーズでメッツと対戦したカンザスシティ・ロイヤルズは、テランス・ゴアに代えてラウル・モンデシーをロースターに加えた。モンデシーはメジャーリーグどころかAAAでプレーしたこともなかったが、第3戦に代打として出場し、結果は三振ながら、ワールドシリーズでメジャーデビューした史上初の選手となった。彼の父はロサンゼルス・ドジャースなどでプレーした、あのモンデシーだ。現在はドミニカ共和国サン・クリストバルの市長を務めている。兄のモンデシーJr.は2010~12年にミルウォーキー・ブルワーズ傘下のマイナーリーグでプレーし、2012年のオフにタンパベイ・レイズへ移ったが、その後は故障でプレーできず、2014年4月に引退した。

●1000試合以上に出場してきたベテラン4人が初めてポストシーズンの舞台に立ち、残るは1人に(2015年10月18日)

アダム・リンドは12月のトレードで、ミルウォーキー・ブルワーズからシアトル・マリナーズへ移籍した。2016年は、ポストシーズン未経験では最も多くの試合に出ている現役選手が、最もポストシーズンから遠ざかっているチームでプレーする。

●どこまで続く「ダニエル・マーフィー祭り」。ポストシーズン新記録の6試合連続ホームランだけじゃない!!(2015年10月23日)

「ダニエル・マーフィー祭り」はリーグ・チャンピオンシップ・シリーズで終了。ワールドシリーズでは20打数3安打で、本塁打だけでなく長打も打点もなし。さらに、第4戦と第5戦で手痛いエラーを犯した。オフにFAとなったマーフィーは、3年3750万ドルでワシントン・ナショナルズと契約した。

●よく似た名前の併殺コンビ誕生!? 「ラウリー」がアスレティックスに戻って「ロウリー」とチームメイトに(2015年11月26日)

ラウリー&ロウリーの併殺コンビは実現しなかった。ジェド・ラウリーがオークランド・アスレティックスに移籍した半月後、ブレット・ロウリーはシカゴ・ホワイトソックスへ放出された。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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