セイバーメトリクスがテニス界にも波及!? ロジャー・フェデラーの新戦法はその名も「セイバー」
今年のUSオープンでロジャー・フェデラーが用いた戦法は、「セイバー」と呼ばれている。「セイバーメトリクス」がベースボールの枠を超え、テニス界にも波及したのだろうか?
いや、そうではないらしい。「セイバー」の綴りは両方とも同じだが、ベースボールの「SABR」が「Society for American Baseball Research(ソサイエティ・フォー・アメリカン・ベースボール・リサーチ)」の略であるのに対し、フェデラーの「SABR」は「Sneak Attack by Roger(スニーク・アタック・バイ・ロジャー)」だ。
ベースボールの「SABR」は日本語では「アメリカ野球学会」。「セイバー」+「メトリクス(測定法、測定基準)」で「セイバーメトリクス」となる。フェデラーの「SABR」は「ロジャーによる(by Roger)奇襲(Sneak Attack)」とでも訳せばいいだろうか。
フェデラーの戦法は、USオープンの直前にシンシナティ行われた、ウエスタン&サザン・オープンの練習中に生まれたものだという。データの解析によって新たな指標を見出し、それをプレーに役立てているわけではないようだ。当初は「KAMIKAZA(カミカゼ)」と呼ばれていて、「Fed Attack(フェド・アタック)」という呼称もあったが、どうやら「セイバー」として定着しそうだ。
テニス・プレーヤーのアンディ・ロディックは、「A-ROD(エー・ロッド)」のニックネームを持っていた。こちらのオリジナルは、アレックス・ロドリゲス(ニューヨーク・ヤンキース)だ。ロドリゲスがシアトル・マリナーズでプレーしていた時に、ブロードキャスターのデーブ・ニーハウスが「A-ROD」と呼び始めた。
ロディックはアメリカ出身だが、フェデラーはスイス出身だ。ただ、「セイバー」と呼ばれる戦法が、シンシナティで生まれ、ニューヨークを舞台とするUSオープンで広く知られるようになったことからすると、ベースボールの「セイバー」「セイバーメトリクス」に引っかけている可能性もある。
昨年の楽天ジャパン・オープンでは、「STAN THE MAN(スタン・ザ・マン)」と胸に記したTシャツが売られていた。これはフェデラーと同じスイス出身のスタン・バブリンカ/ワウリンカのことだが、ベースボールにおける「スタン・ザ・マン」と言えば、第2次世界大戦を挟みながらセントルイス・カーディナルスで活躍した、スタン・ミュージアルを措いて他にいない。
一方、ニックネームではないが、トロイ・トゥロウィツキ(トロント・ブルージェイズ)はコロラド・ロッキーズにいた2014年に、ノバク・ジョコビッチの食事やコンディショニング法などを採り入れた。また、「グランドスラム」はベースボールとテニス、さらに他のスポーツでも使う言葉だが、オリジナルはカード・ゲームのブリッジだ。
ちなみに、錦織圭の「エアK」(「エア・コリ」)は元NBAのマイケル・ジョーダン――ベースボールにおいてはマイナーリーガーだった――の「エア・ジョーダン」からきていると思われる。