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もしかすると、今年のポストシーズンに出場する日本人メジャーリーガーは皆無かもしれない

宇根夏樹ベースボール・ライター
田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)SEPTEMBER 2, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

昨年のポストシーズン(プレーオフ)に出場した日本人メジャーリーガーは、カンザスシティ・ロイヤルズの青木宣親(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)だけだった。今年は2010年以来5年ぶりに、日本人メジャーリーガーが出場しないポストシーズンになるかもしれない。9月2日終了時点のチーム順位・ゲーム差に、それ以外の要素も考慮しつつ、それぞれの選手の出場の可能性を探ってみた。

田中将大/ニューヨーク・ヤンキース(ア・リーグ東地区)

ヤンキースは地区首位のトロント・ブルージェイズから1.5ゲーム差の2位にいて、ワイルドカード・レースでは2番手のテキサス・レンジャーズに4ゲーム差をつけてトップを走っている。ブルージェイズを追い抜いて地区優勝すれば、ディビジョン・シリーズ(地区シリーズ)は少なくとも3試合あるので、故障でもしていない限り、田中はいずれかの試合で先発マウンドに立つはずだ。ただ、地区優勝を逃してワイルドカード・ゲームに回ると、事情は違ってくる。ヤンキースとしては田中をワイルドカード・ゲームに先発させたいところだろうが、登板間隔によっては投げられない可能性も出てくる。特に、地区優勝やワイルドカードの行方が最後までもつれた場合は、登板日を調整する余裕はない。他の投手がワイルドカード・ゲームに先発して敗れてしまえば、田中は登板しないままポストシーズンを終えることになりかねない。

川崎宗則/トロント・ブルージェイズ(ア・リーグ東地区)

ブルージェイズがポストシーズンに進出したとして、川崎――山・大・可の「崎」ではなく山・立・可だが、文字化けしてしまうためにこちらで代用――はロースターに入れるのか。正直言って難しいだろう。9月1日に今シーズン5度目のメジャーリーグ昇格を果たしたが、この日より40人に増えたロースターは、ポストシーズンに入ると再び25人となる。ブルージェイズは8月8日にクリフ・ぺニントンをアリゾナ・ダイヤモンドバックスから獲得し、その翌日、ぺニントンをロースターに登録するのと入れ替わりに川崎をAAAへ落としている。三塁にジョシュ・ドーナルソン、遊撃にはトロイ・トゥロウィツキがいて、二塁を守っているライアン・ゴーインズとぺニントンの2人は、三塁と遊撃もこなす。本来なら正二塁手のデボン・トラビスは左肩の故障で7月下旬から欠場していて、そのまま復帰できない可能性が高いが、まだあきらめてはいないらしい。

青木宣親/サンフランシスコ・ジャイアンツ(ナ・リーグ西地区)

ジャイアンツは地区首位のロサンゼルス・ドジャースからも、ワイルドカード2番手のシカゴ・カブスからも6.5ゲーム差の位置にいる。これはかなり厳しい状況だ。カブスとの対戦はすでに終わっている。ドジャースとは9月28日~10月1日にホームで4連戦を行うが、それまでにゲーム差を詰めておかないと、スウィープで4連勝しても追いつけない。また、ドジャースには9勝6敗と勝ち越していて、ホームの6試合は負け知らずだが、8月31日~9月2日の3連戦は、いずれも1点差ながら全敗を喫した。

和田毅/シカゴ・カブス(ナ・リーグ中地区)

カブスはセントルイス・カーディナルスと10.5ゲーム差の地区3位ながら、ワイルドカード・レースではピッツバーグ・パイレーツまで4.5ゲーム差の2番手につけている。9月1日にAAAから昇格した和田は、先発ではなくまずはリリーフとして投げる見込みだが、どちらの役割にせよ、ポストシーズンのロースターに残るチャンスはありそうだ。先発投手陣ではカイル・ヘンドリクスダン・ヘイレンジェイソン・ハメルの3人が、いずれも8月以降の6先発で防御率5点台。現在はブルペンにいるものの、先発経験の方が豊富なクレイトン・リチャードトラビス・ウッドともども、和田も代わってローテーション入りする候補の一人だろう。リチャードとウッドは左腕なので、ブルペンのメンバーとしても和田にはライバルになる。ポストシーズンの先発投手はジョン・レスタージェイク・アリエタの他に2人(ポストシーズンのローテーションは4人で回せる)で、左のリリーバーも2人までか。ただ、和田がロースターに入っても、カブスの地区優勝は絶望的なため、チームが1試合でポストシーズンから姿を消し、和田は登板機会なしというケースもあり得る。

ダルビッシュ有/テキサス・レンジャーズ(ア・リーグ西地区)

レンジャーズは地区首位のヒューストン・アストロズまで2ゲーム差に迫っていて、ワイルドカード・レースではミネソタ・ツインズを1ゲーム差で凌いで2番手にいるが、ダルビッシュは3月にトミー・ジョン手術を受け、現在はリハビリ中。本人は8月18日に「手術から5ヶ月が経ち、今日からキャッチボールが始まりました。15メートルぐらいの距離でしたが違和感も痛みもなく投げることが出来ました。またちょっとずつ前進していきます。」とツイートしている。

他の日本人メジャーリーガー

岩隈久志がいるシアトル・マリナーズ(ア・リーグ西地区)は地区首位まで10ゲーム差で、ワイルドカード2番手までは8ゲーム差。同様に、上原浩治(8月に右手首の骨折でシーズン終了)と田澤純一がいるボストン・レッドソックス(ア・リーグ東地区)は15ゲーム差と9.5ゲーム差、イチローがいるマイアミ・マーリンズ(ナ・リーグ東地区)は19.5ゲーム差と21ゲーム差をつけられている。クリーブランド・インディアンス傘下のAAAで投げている村田透は、今後、再昇格する可能性はあるが、インディアンス(ア・リーグ中地区)は地区首位から17ゲーム差、ワイルドカードの2番手から6ゲーム差の位置にいる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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