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18年ぶりとなる1試合2本のランニング本塁打は、最初の本塁打が次の本塁打を呼んだ!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
サルバドール・ぺレスに祝福されるジャロッド・ダイソン Jul 8, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

タンパベイ・レイズとカンザスシティ・ロイヤルズが対戦した7月8日の試合で、ローガン・フォーサイス(レイズ)とジャロッド・ダイソン(ロイヤルズ)が、それぞれランニング本塁打(インサイド・ザ・パーク・ホームラン)を打った。

4回表、フォーサイスが左中間へ放った打球をアレックス・ゴードンが追う。走りながらゴードンはグラブを差し出したが、わずかに届かず、ボールはウォーニング・トラックでバウンドした。ゴードンはフェンスにぶつかり、うつ伏せに倒れて立ち上がれず。フォーサイスは二塁で減速したものの、倒れているゴードンとその横に落ちているボールを目にして、再びスピードを上げる。ロレンゾ・ケインが拾ったボールは、オマー・インファンテを経由してホームへ戻ってきたが、間に合わずにランニング本塁打となった。

ゴードンはその後も立てず、カートに乗って退場。左足の鼠蹊部(付け根)の怪我により、全治8週間と診断された。そのゴードンに代わって出場したのがダイソンだ。6回裏にダイソンが放った打球は、レフトのライン際へ飛んだ。デビッド・デヘススがダイビング・キャッチを試みるが、こちらもわずかに及ばず、ボールは後方へ。ダイソンは快足を飛ばし、ホームまで戻ってきた。ダイソンもフォーサイスと同じように、ヘッド・スライディングで生還した。

これらのランニング本塁打は2本とも、ゴードンが怪我をしなければ生まれなかった。すぐにゴードンが立ち上がり、ボールを拾って投げていたなら、フォーサイスは二塁か三塁で止まっていたはずだ。ゴードンは肩が強く、送球のコントロールも良い。フォーサイスがホームへ向かったとしても、アウトになっていた可能性が高い。また、ゴードンが無事なら、ダイソンが代わって出場することもなかったに違いない。

イライアス・スポーツ・ビューローによれば、1試合に2本のランニング本塁打が出たのは、1997年5月26日のシカゴ・カブス対ピッツバーグ・パイレーツでサミー・ソーサ(カブス)とトニー・ウォーマック(パイレーツ)が記録して以来、18年ぶりのことだという。ア・リーグの試合では、1983年5月25日のデトロイト・タイガース対トロント・ブルージェイズ以来32年ぶり。この時は、カーク・ギブソン(タイガース)とジョージ・オータ(ブルージェイズ)がランニング本塁打を打った。

なお、メジャーリーグ5年目のフォーサイスはこの本塁打が通算27本目、6年目のダイソンは通算5本目で、2人ともランニング本塁打はキャリア初。フォーサイスのランニング本塁打はレイズ史上14本目、ダイソンはロイヤルズ史上96本目だ。

今シーズンは2人の他にも、4月29日にジェームズ・マッキャン(タイガース)、6月30日にディー・ゴードン(マイアミ・マーリンズ)がランニング本塁打を打っている。こちらの2人もキャリア初のランニング本塁打。マッキャンに至っては本塁打自体が初めてのことで、2012年4月20日の青木宣親(当時ミルウォーキー・ブルワーズ/現サンフランシスコ・ジャイアンツ)以来の、メジャーリーグ初アーチをランニング本塁打で記録した選手となった。ちなみに、マッキャンのポジションはブライアン・マッキャン(ニューヨーク・ヤンキース)と同じ捕手で、2人とも背番号は「34」だが、彼らは兄弟ではないし、親戚でもない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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