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日本には38歳で東大野球部に入った投手がいる一方、アメリカでは34歳が海軍生活17年を経て大学初登板

宇根夏樹ベースボール・ライター

日本では、伊藤一志投手が38歳で東京大学の野球部に入部した。そのニュースが報じられる数日前に、アメリカでは、34歳のブライアン・ホルコムが大学の公式戦に初登板した。

ジョージア・サザン大とジャクソンビル大が対戦した4月28日の試合。ジャクソンビル・ドルフィンズの先発投手として1回表のマウンドに上がったホルコムは、カウント2-2としたところで、サイドアームからの投球を1番打者にライト前へ弾き返された。そこでヘッドコーチが出てきて交代となり、ホルコムはダグアウトの前でチームメイトに出迎えられた。

今後、ホルコムが登板する可能性は低そうだが、ロースターに入っただけでも称賛に値する。ジャクソンビル大は大学最高レベルのNCAAディビジョン1に加盟していて、現役メジャーリーガーではダニエル・マーフィー(ニューヨーク・メッツ)を輩出している。ホルコムは高校3年時に、67.1回を投げて、4勝1敗、防御率1.90を記録した。

ジャクソンビル大の広報、イーサン・カウフマンの記事によれば、ホルコムはチームメイトから「ドク」と呼ばれているという。だが、彼は医師ではなく、ミシガン州の高校を卒業後、海軍で17年間を過ごした。

また、ホルコムが登板する3日前には、同じく海軍出身の投手がメジャーデビューを果たした。29歳のミッチ・ハリス(セントルイス・カーディナルス)だ。4月25日の試合で左アキレス腱を故障したアダム・ウェインライトに代わって5回裏からマウンドに立ち、1.1イニングで被安打と与四球は2ずつながら、続いて投げたマット・ベライルの好投もあって、得点は許さなかった。

ハリスは海軍兵学校の出身。2008年のドラフトでカーディナルスから13巡目・全体395位指名を受け、5年間の兵役を終えた後、2013年からカーディナルス傘下にあるマイナーリーグのチームで投げ始めた。

4月20日にメジャーリーグ昇格が決まったハリスは「何という旅…夢が叶った。海軍からMLBへ。カーディナルスに合流するため、DCへ向かっている。これからが楽しみ」とツイートした。こちらは1登板だけでなく、26、28日に1イニングずつを投げ、いずれも無失点に抑えた。29歳のメジャーデビューは遅いものの、まだ旅は続きそうだ。

なお、開幕前に取り上げた、カムバックをめざすベテラン3投手にもそれぞれ動きがあった。マーク・ヘンドリクソン(「孫もいる40歳のサウスポーが、4年ぶりのメジャーリーグ復帰をめざす」)は3月半ばにボルティモア・オリオールズから解雇。月末に引退を決めたようだ。オリオールズが指導者として契約するという噂も出ていたが、今のところは実現していない。

ヘンドリクソン解雇の数日前に引退を決めたドントレル・ウィリス(「2003年のナ・リーグ新人王、Dトレインが2度目の引退。同年のア・リーグ新人王はどこへ」)は、4月半ばにFOXスポーツの解説者となることが発表された。ヘンドリクソンとウィリスと違い、バリー・ジート(「アスレティックスでハドソン、マルダーと「ビッグ3」を形成したジートが、カムバックに向けて好投中」)は投げ続けている。開幕直前にオークランド・アスレティックスから告げられたマイナーリーグ行きを受け入れ、ジートはAAAのナッシュビル・サウンズへ。4月は5先発して25.2イニングを投げ、防御率5.96だった。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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