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メジャーリーグの監督・コーチには、日本プロ野球の経験者が20人以上いる

宇根夏樹ベースボール・ライター

2012年のメジャーリーグには、日本プロ野球で監督を務めたか、選手としてプレーしたことのある監督が5人いた。ボストン・レッドソックスではボビー・バレンタイン(千葉ロッテ・マリーンズ監督/1995、2004~09年)、ニューヨーク・メッツではテリー・コリンズ(オリックス・バファローズ監督/2007~08年)、フィラデルフィア・フィリーズではチャーリー・マニエル(ヤクルト・スワローズ/1976~78、81年、近鉄バファローズ/1979~80年)、ワシントン・ナショナルズではデービー・ジョンソン(読売ジャイアンツ/1975~76年)、コロラド・ロッキーズではジム・トレーシー(横浜大洋ホエールズ/1983~84年)が、それぞれ采配を揮っていた。

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現在の30監督に、日本プロ野球の経験者はコリンズしかいない。だが、コーチに目を向けると、その人数は多い。コリンズと同じく日本プロ野球で監督の経験を持つのは、ヒューストン・アストロズのベンチ・コーチ、トレイ・ヒルマン(北海道日本ハム・ファイターズ監督/2003~07年/※2003年は日本ハム・ファイターズ)だ。ヒルマンは2008~10年にカンザスシティ・ロイヤルズの監督(2010年5月に解任)、2011~13年にロサンゼルス・ドジャースのベンチ・コーチ、2014年にニューヨーク・ヤンキースの特別アシスタントを務めた後、昨年10月より現職に就いた。その直前にはヤンキースのコーチ就任も噂されていた。

ヒルマンが北海道日本ハムで指揮を執っていた最終年に、そのチームで18試合に出場したアンディ・グリーンは、今シーズンからアリゾナ・ダイヤモンドバックスの三塁コーチとなった。元日本ハムの選手では、1993~94年にプレーしたリック・シューも、ナショナルズで打撃コーチを務めている。ナショナルズにはシューとともにトニー・タラスコ(阪神タイガース/2000年)もいて、一塁コーチ・ボックスに立っている。

タラスコと同じ年に日本プロ野球でプレーしたコーチは、他にもいる。トーリ・ロブロ(ヤクルト/2000年)はレッドソックスのベンチ・コーチ、トニー・フェルナンデス(西武ライオンズ/2000年)はテキサス・レンジャーズの特別アシスタントだ。

フェルナンデスが日本プロ野球に来る前にメジャーリーグで2240安打&245盗塁(通算2276安打&246盗塁)を記録していたように、シカゴ・ホワイトソックスでブルペン・コーチを務めるボビー・シグペン(福岡ダイエー・ホークス/1994~95年)も、来日前に201セーブ(通算201セーブ)を挙げた。一方、サンディエゴ・パドレスのアシスタント打撃コーチ、アロンゾ・パウエル(中日ドラゴンズ/1992~97年、阪神/1998年)は来日前にメジャーリーグで14試合(通算71試合)に出場しただけだったが、日本プロ野球では1994年から3年続けて首位打者を獲得した。

パウエルは日本プロ野球のキャリアが長いだけに、その間のチームメイトも少なくない。阪神では、後にメジャーリーガーとなる新庄剛志藪恵壹とも一緒にプレーした。パウエルの日本プロ野球時代のチームメイトのうち、ブルック・ジャコビー(中日/1993年)とダーネル・コールズ(中日/1996年、阪神/1997年)はそれぞれトロント・ブルージェイズとミルウォーキー・ブルワーズで打撃コーチ、デーブ・ハンセン(阪神/1998年)はロサンゼルス・エンジェルスでアシスタント打撃コーチを務めている。

また、ブルージェイズにはジャコビーだけでなく、投手コーチとしてピート・ウォーカー(横浜ベイスターズ/2004年)もいる。ブルワーズではコールズとともに、リー・タネル(福岡ダイエー/1991~93年)がブルペン・コーチ、ジョー・クロフォード(千葉ロッテ/1998~99年)がアシスタント・コーチとして働いている。

肩書きは打撃コーチが最も多く、シュー、ジャコビー、コールズに加え、ボルティモア・オリオールズのスコット・クールボー(阪神/1995~96年)、クリーブランド・インディアンスのタイ・バン・バークレオ(西武/1988~90年、広島東洋カープ/1991年)、サンフランシスコ・ジャイアンツのヘンスリー・ミューレンス(千葉ロッテ/1994年、ヤクルト/1995~96年)がそうだ。アシスタント打撃コーチも、パウエル、ハンセン、レンジャーズのボビー・ジョーンズ(中日/1979~80年)、アストロズのアラン・ジンター(西武/1999年)と4人を数える。それらに次いで多いのは、ブルペン・コーチの3人。シグペン、タネルの他に、フィラデルフィア・フィリーズでロッド・ニコルズ(福岡ダイエー/1997年)が務めている。

彼ら、日本プロ野球の経験を持つコーチのうち、メジャーリーグの監督に最も近いのは、グリーンだろう。2011~14年にダイヤモンドバックス傘下にあるマイナーリーグのチームで監督を務めたグリーンは、2013年と2014年にAAのサザン・リーグで最優秀監督に選ばれ、昨オフはダイヤモンドックスの新監督候補の一人に挙がっていた。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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