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2003年のナ・リーグ新人王、Dトレインが2度目の引退。同年のア・リーグ新人王はどこへ

宇根夏樹ベースボール・ライター

3月13日、ミルウォーキー・ブルワーズのロン・レネキー監督が、ドントレル・ウィリスの引退を発表した。ウィリスはカムバックをめざし、マイナーリーグ契約の招待選手としてブルワーズのスプリング・トレーニングに参加していた。首の張りにより、登板が予定されていた3月7日のエキシビション・ゲーム(オープン戦)を回避。そのままマウンドには戻らなかった。

彼のことを知らない人もいるかもしれない。ウィリス――というよりも「Dトレイン(ディー・トレイン)」と呼ぶ方が馴染み深い――が最後にメジャーリーグで投げたのは4年前。2008年以降はフルシーズンをメジャーリーグで過ごしたこともない。メジャーリーグ通算9年間の成績は、205登板(202先発)で1221.2イニングを投げ、72勝69敗、防御率4.17だ。

けれども、2003年にフロリダ・マーリンズ(現マイアミ・マーリンズ)からメジャーデビューした当時のDトレインは鮮烈だった。背を反らせながら、スパイクの底が一塁手からはっきり見えるまで右足を高々と上げるトリッキーなフォーム。投球だけでなく、右足の膝から下をぴょんと曲げて地面と平行にする打撃フォームも、あのスマイルも忘れ難い。

2003年のナ・リーグ新人王に輝いた時、Dトレインの1ヵ月後に同じくマーリンズからメジャーデビューしたミゲル・カブレラ(現デトロイト・タイガース)は5位タイだった(ア・リーグでは松井秀喜が2位に入った)。Dトレインは単なる一発屋――も大好きではあるが――とは違い、2005年はリーグ3位の防御率2.63、5位のFIP2.99を記録し、両リーグ最多の22勝を挙げた。

2007年12月に6選手との交換でカブレラとともにタイガースへトレードされた時には、カブレラのみならずDトレインも大いに話題になった。今から思えば、すでに失速は始まっていたのだが、タイガースもローテーションの一角として考えていた。

Dトレインの引退は今回が初めてではなく、ボルティモア・オリオールズのAAAにいた2012年7月に、最初の引退をしている。翌年に引退を撤回し、1月にシカゴ・カブスとマイナーリーグ契約を交わした後は、ロサンゼルス・エンジェルスとサンフランシスコ・ジャイアンツのAAAに加え、独立リーグでも投げた。

33歳。今後、2度目の引退撤回をして3度目のカムバックを試みてもおかしくない年齢ではある。ただ、近年は故障も多かったことを思うと、その可能性は低いだろう。せめて、エキシビション・ゲームであっても、Dトレインのラスト・ランならぬラスト・ピッチを見たかったが、これは勝手な思い入れでしかない。ブルワーズのビート・ライター、MLB.comのアダム・マッカルビーの記事によれば、Dトレインのところには、すでにベースボール関連の仕事の申し出がいくつか来ているという。

なお、2003年の新人王投票で票を得た14人のうち、マーロン・バード(現シンシナティ・レッズ)、ホゼ・レイエス(現トロント・ブルージェイズ)、マーク・テシェーラ(現ニューヨーク・ヤンキース)、カブレラの4人は、今も現役のメジャーリーガーだ。また、ア・リーグ新人王のアンヘル・ベローアは、2009年を最後にメジャーリーグから姿を消しているが、2014年はメキシカン・リーグでプレーした。現在もメジャーリーグ復帰を望んでいるらしい。SBネイションのクリス・コッティーロがツイッターで報じている。バードとテシェーラ、ベローアはDトレインより年上である。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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