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孫もいる40歳のサウスポーが、4年ぶりのメジャーリーグ復帰をめざす

宇根夏樹ベースボール・ライター

メジャーリーグ各球団のスプリング・トレーニングが、2月19日に幕を開ける。スケジュールは球団ごとに異なるが、この日から23日にかけてバッテリーが始動。24~28日には野手もトレーニングを始める。そこには、40人ロースターに入っている選手とともにマイナーリーグ契約のノンロースター・インバイティ(NRI/ロースター外の招待選手)が参加し、このなかから25人の開幕ロースターがセットされる。

招待選手の顔ぶれはさまざまだ。プロスペクトがいれば、ベテランもいる。かつてメジャーリーグで活躍した選手も少なくない。ダン・アグラヒース・ベル(ワシントン・ナショナルズ)、ブラッド・ペニー(シカゴ・ホワイトソックス)、ホゼ・バルバーディ(サンディエゴ・パドレス)、ジョエル・ハンラハン(デトロイト・タイガース)、アンドルー・ベイリー(ニューヨーク・ヤンキース)、ドントレル・ウィリス(ミルウォーキー・ブルワーズ)。彼らは皆、オールスター・ゲームに2度以上選ばれたことがあるが、今春は招待選手としてスプリング・トレーニングに参加する。エリック・ベダード(ロサンゼルス・ドジャース)やチェンミン・ワン(アトランタ・ブレーブス)も招待選手だ。

輝きという点では彼らに劣っても、ユニークさでは引けをとらない選手もいる。ジェイソン・レイン(パドレス)もそう。外野手から投手に転向したレインは、2014年に7年ぶりのメジャーリーグ復帰(投手としてはメジャーデビュー)を果たした。

そのレイン以上に異彩を放っているのが、メジャーリーグ通算328登板の左腕、マーク・ヘンドリクソン(ボルティモア・オリオールズ)だ。40歳のヘンドリクソンは孫もいて、2011年を最後にメジャーリーグでは投げていない。ジェイミー・ライト(テキサス・レンジャーズ)も40歳(ヘンドリクソンより6ヵ月若い)の招待選手だが、2011年から2014年まで4年続けて、チームを移りながら60登板&65イニングをクリアしている。「Dトレイン」ことウィリスも最後のメジャーリーグ登板は2011年ながら、年齢は33歳だ。

また、身長6フィート9インチ(約206cm)のヘンドリクソンは、NBA選手という経歴も持つ。ポジションはパワー・フォワード。1996~2000年にNBAの114試合に出場した。NBAとMLBの両方でプレーした選手は12人しかおらず、ヘンドリクソンを最後に現れていない。そこには、俳優としても活躍したチャック・コナーズも含まれているが、マイケル・ジョーダンは入っていない。ヘンドリクソンのMLBデビューは2002年ながら、1998年からトロント・ブルージェイズ傘下のマイナーリーグで投げ始めているので、プロとしてのキャリアはNBAと重なっている。

実は、ヘンドリクソンのチャレンジは今回が初めてではない。2011年9月にオリオールズから解雇されたヘンドリクソンは、翌年を丸々休んだ後、オリオールズとマイナー契約を交わし、招待選手として2013年のスプリング・トレーニングに参加した(当時、孫はまだいなかった)。38歳でメジャーリーグ復帰を果たせなかったとなれば、40歳ではなおさら困難だろう。オリオールズのブルペンには、クローザーのザック・ブリットンだけでなくブライアン・マティスウェズリー・ライトもおり、左腕は不足していない。

ただ、バック・ショーウォルター監督のアドバイスを受け、ヘンドリクソンは2013年から投げ方をサイドアームに変えている。ヘンドリクソンはメジャーリーグ1年目の2002年こそ36.2回を投げて防御率2.45を残したものの、その後9シーズンはいずれも防御率4.20以上だった。レベルの高低はさておき、ヘンドリクソンはサイドアーマー1年目にAAAで防御率3.06(67.2回)、2年目は独立リーグで防御率1.54(52.2回)を記録している。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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