東急電鉄東横線で2021年12月13日、線路内の一部が陥没した。陥没は土の上に敷かれた線路で起きている。なぜ発生したのか、そしてほかの同様の線路をもつ鉄道でも起きうるのか、検証したい。

線路に長さ約200cm、幅約120cm、深さ50cmの空洞が突如発生

 神奈川県横浜市港北区の東急電鉄東横線の元住吉駅と日吉駅との間で12月13日14時44分ごろ、東横線元住吉駅・渋谷駅方面(以下東横線上り)の線路内の一部が陥没しているのを線路を見回っていた保守部門の担当者が発見した。この場所では線路は元住吉駅寄りの北北東方向から日吉駅寄りの南南西方向へと敷かれ、直交する東南東側からそれぞれ東横線日吉駅・横浜駅方面(同東横線下り)、目黒線日吉駅方面(同目黒線下り)、目黒線元住吉駅・目黒駅方面(同目黒線上り)、東横線上りと4本の線路が並んでいる。陥没によってすぐ隣の目黒線上りの線路も影響を受け、結局東横線は武蔵小杉駅と菊名駅との間、目黒線武蔵小杉駅と日吉駅との間でともに列車の運転が見合わせとなった。

 復旧に当たり、東急電鉄は陥没した場所にバラストといってレールとまくらぎとを支持する目的で使用される砕石、またはふるいにかけられた砂利を充てんする。その後、同社は安全を確認し、同日17時20分ごろに目黒線で、同日17時38分ごろに東横線でそれぞれ運転が再開された。

 東急電鉄によると、陥没は日吉駅から約170m元住吉駅に向かった場所で発生したという。線路は元住吉駅から約1.3kmは高架橋上、残る約200mは盛土(もりど)を築いた地平または土地を削って設けた深い堀割の中をそれぞれ行く。今回の陥没は盛土を築いた地平の区間で起きている。

 翌12月14日に東急電鉄は「【ご報告】東横線日吉駅~元住吉駅間での線路内一部陥没を受けた安全確認の実施について」を同社のホームページで発表し、12月18日に内容を改めて「(再掲)【ご報告】東横線日吉駅~元住吉駅間での線路内一部陥没を受けた安全確認の実施について」と更新されている。この資料に加えて同社への取材も行ったので、陥没の様子を説明したい。

 陥没はバラストの下に敷かれた盛土の部分に空洞が生じたために生じたという。空洞の大きさは、列車の進行方向となるレール方向が約200cm、列車に対して直角方向となるまくらぎ方向が約120cm、深さ約50cmであった。なお、空洞が発生した原因は調査中であるとしている。

盛土上の線路はどのように敷かれているのか

 陥没の様子は東急電鉄提供の写真、断面図も併せてご覧いただきたい。東横線上り線の線路がどのように敷かれているかと言うと、まずは鋼鉄製のレールが2本敷かれ、それからよく見ると空洞の生じた側のレールの横にはもう一つ鋼材が置かれている。車輪が逸脱することを防ぐために敷設された脱線防止ガードという。

線路内の一部が陥没した東横線上り線。写真奥のレールには脱線防止ガードが装着されているのがわかる。提供:東急電鉄
線路内の一部が陥没した東横線上り線。写真奥のレールには脱線防止ガードが装着されているのがわかる。提供:東急電鉄

線路の陥没が起きた場所の断面図。提供:東急電鉄
線路の陥没が起きた場所の断面図。提供:東急電鉄

 地図を見ると、日吉駅から170m元住吉駅寄りにある東横線上りの線路は右カーブとなっている。写真と断面図とを照合すると、脱線防止レールが付いているのは目黒線上り側であるから、右カーブの内側となるレールに取り付けられているようだ。この場所に敷かれた脱線防止レールは、車輪のうち内側の車輪が遠心力でレールから離れないように押さえる役割を果たす。

 レールの下にはプレストレストコンクリート(PC)製のまくらぎがある。まくらぎの下に見えるのが直径2cm程度から6cm程度までの大きさのバラストで、30cmほどの厚さに散布された。レール、まくらぎ、バラストまでをひとまとめにして軌道と呼び、特にバラストを用いた軌道をバラスト軌道という。

 バラストの下は土によって築かれた土の構造物となり、断面図では盛土とある。本来であればバラスト直下は路盤と呼ばれる基礎部分で、ここでは土で築かれているので土路盤となるはずだ。しかし、東急電鉄は陥没が起きた場所の地盤について土路盤と盛土とを分けず、盛土とまとめて呼んでいる。

 盛土と言うからには土を盛って築堤とした場所と思われるが、東急電鉄によるとそうではなく、元の地盤のままだという。線路脇の側道の整備に当たり、土を切り取って線路よりも低い位置に道路を敷き、線路と道路との境界に擁壁を設置した。この結果、線路が築堤に敷かれているように見え、盛土として扱われているのだ。

一般に軟弱な地盤と言われる場所で線路は陥没した

 陥没が発生した東横線上り線は東横線を複線から複々線とする過程で誕生した線路である。土木工事は1993(平成5)年末に完成し、線路自体は2006(平成18)年6月の線路切換直前に敷かれて列車の運転が開始された。盛土の地質はバラスト直下の表層から地下3mまでが粘土、地下3mよりも深い場所はシルト質粘土ほかであるという。シルト質粘土の「質」とは15%以上50%未満の混入率という意味で、つまりは粘土に対してシルトが15%以上50%未満の割合を占める土となる。

 なお、粘土とは粒を球体に見立てたときの直径を指す粒径が0.005mm以下の土、シルトとは粒径0.005mm~0.074mmの土をそれぞれ指す。土にはほかにもあり、粒径が0.074mm~2mmが砂、粒径2mm以上が礫(れき)だ。一般に礫や砂は水はけがよく良好な地盤を形成し、シルトや粘土は水はけが悪く軟弱な地盤を形成すると言われる。なお、東急電鉄によると盛土の土はすべて元からあったもので、客土と言って他の場所から運び入れた土はないとのことだ。

 ここまでバラスト軌道について当たり前のように述べてきたけれども、一般にあまり知られていない点を補足しておこう。何かと言うと、レールとまくらぎとは犬くぎと呼ばれる釘で直接またはタイプレートという締め付け用の鋼板を介して固定されているものの、まくらぎとバラストやその下の土とは杭などが打ち込まれているのではなく、バラストや土にただ載っているだけという点だ。列車の通過に伴ってレールやまくらぎは前後や左右、上下の各方向から強い力を受けるものの、バラストがしっかり押さえていて、列車が何度か通ったくらいでは動くことはないからである。

宮城県仙台市内のJR東日本東北線で実施された線路の保守作業。暗闇のなか、明るく照らされた線路でバラストの突き固めが繰り返されていた。筆者撮影
宮城県仙台市内のJR東日本東北線で実施された線路の保守作業。暗闇のなか、明るく照らされた線路でバラストの突き固めが繰り返されていた。筆者撮影

 見た目に反していくらバラストが頑丈とは言っても、多数の列車が通過すればバラストはまくらぎの下から徐々に崩れ、バラスト自体もすり減っていく。するとレールやまくらぎに歪みが生じて列車の運転にも支障を来し、乗り心地が悪くなったり、最悪の場合は脱線の危険も生じる。このため、突き固めといってまくらぎの下にバラストを押し込んで盛り直したり、すり減ったバラストを取り除いて新しいバラストを入れる作業が欠かせない。

陥没はなぜ、どのようにして起きたのか

 それでは東急電鉄から得られた情報に基づき、今回の陥没はどのような原因が考えられるのか、そしてこの場所特有のものなのか、バラスト軌道であればほかの場所でも起きる可能性が高いのかを検証してみたい。

 そもそもの話として、陥没したのであるから盛土の土がどこかに消えたはずだ。盛土は両側面からコンクリート製の擁壁で押さえられていて、列車の通過によって土が踏みつけられたからと言って擁壁からせり出したとは考えられない。となると、さらに地中深くへと沈んだか、バラスト部分へと上ったと考えられる。

 いま挙げた2つの現象はどちらも同じ原因で起きるという。それは多数の列車が線路を通ることで盛土が沈下したからだ。

 東横線上り線には日々大量の列車が通っていく。古いデータながら、2015(平成27)年度の平日1日平均で東横線上り線では、最も混雑率の高い祐天寺駅から中目黒駅までの区間で352本の列車が運転され、延べ3018両の車両が通過した。陥没が起きた場所では通り過ぎた列車の本数、延べ車両数とも減少するものの、それでも1日300本、延べ2500両は下らないであろう。

 詳細は不明ながら盛土には排水設備があるはずで、雨水や地下水などは擁壁などから排出されると見られる。大量の水分を含んだ粘土やシルト質粘土の盛土の土へと列車の重みや振動がバラストを通じて伝わると、バラストの粒が土へとめり込んで盛土内の土と水分とが分かれることが起きるそうだ。そこにさらに列車の重みや振動が加わるとポンプのような力が生じ、バラストに近い土はバラスト内を上昇してまくらぎにまで達し、そのほかの土はさらに地下へと沈んでいく。結果として水だけが取り残されてバラストの真下に滞水部分をつくることがある。このような滞水部分をウォーターポケットという。正確には単なる水たまりではなく、泥水や細かい石、砂が詰まった空洞状のものだ。そして、ウォーターポケット内にたまった泥水だけが何らかの原因で失われると、空洞状ではなく本物の空洞となる。

 なお、ウォーターポケットはレールの継目またはレールを溶接した場所で多く見られるそうだ。東急電鉄提供の写真にはレールの継目は見当たらないが、レールを溶接した場所であるのかもしれない。

地震や周辺の土木工事が原因とも考えられる

 今回の陥没が局地的な理由で生じた可能性もある。原因として考えられるのは地震または周辺で行われている土木工事だ。

 地震というと関東地方では2021年10月7日に千葉県北西部を震源とする最大震度5強の地震が発生し、陥没の起きた横浜市港北区でも震度5弱を観測した。地震から2カ月余りが過ぎて地盤沈下が起きたのかどうかは不明で、今後の調査を待つほかない。

 日吉駅周辺で鉄道に関する土木工事に該当するのは、2022(令和4)年下期に相模鉄道の相鉄新横浜線羽沢横浜国大駅と日吉駅との間の10.0kmが開業予定の相鉄・東急直通線の地下トンネル工事だ。ただし、地下トンネルは日吉駅から見て綱島駅・横浜駅寄りであり、陥没した元住吉駅・渋谷駅寄りではない。影響がないとは断言できないので、こちらも今後の調査結果を待ちたい。

陥没がほかの鉄道で起きる可能性はあるのか

 さて、今回東横線で発生した線路内の一部陥没がウォーターポケットによるものであったとすると、同様の構造の線路をもつ鉄道は大変多く、殊に首都圏の鉄道でも起きる可能性がある。というのも、首都圏の鉄道は軒並み列車の通過する本数が多いし、そして関東ローム層といって粘性度の高い土が多数を占める軟弱な地盤上に線路が敷設されているからだ。

 線路を土の上に敷設するには国土交通省の通達である「鉄道構造物等設計標準(土構造物)」(以下設計標準)に従わなくてはならない。現行の設計標準は2007(平成19)年に改められ、土の上に線路を敷く際にはバラストの下にクラッシャランと言って機械によって砕かれた石の路盤、またはアスファルトの路盤を30cmの厚さで設けるように定められている。

 今回陥没が起きた線路の構造は設計標準を満たしていないが、2007年以前の1980年代後半の施工であるから別に違反ではない。当時の設計基準では、直径30cmの鋼板を土の表面に置いて強い力で押したときにどの程度沈むかという支持力係数が定められており、東急電鉄はノーコメントというが、基準を満たしているのは間違いない。

 参考までに支持力係数は1立方メートル当たり70メガニュートン以上であり、満たさない場合は地盤改良が必要とされている。今日であればこの基準を緩いと批判もできるが、1968(昭和43)年以前には基準そのものが存在せず、土の上に線路を敷くに当たっての設計とは経験と勘とが頼りであった。

 今日、列車の通過本数が多く、なおかつ軟弱な地盤が多くを占める首都圏の鉄道では各社とも土の上に敷かれたバラストの線路の保守に手を焼いている。バラストの突き固めや取り替えは毎晩どこかの区間で行われており、東横線で起きた線路の一部陥没を他人事だとは思えないのだ。

 そんなに大変ならば土の路盤をクラッシャランなりアスファルトなりに変えてしまえばよい。そう思うであろう。現実にJR東日本では1999(平成11)年から精力的に土の路盤の改良工事に取り組んでいるし、関東の大手私鉄各社もこの動きに追随している。

 しかしながら、列車が運転されていない真夜中の一晩に施工可能な距離は1kmでも100mでもなくわずか10m、東横線を走る車両の長さは1両20mであるのでその半分にすぎない。大都市圏であるから線路は複線、場合によっては複々線と多いから、すべての改良工事が終わるまでには気が遠くなるような時間を要するであろう。

路盤が強固なために土にさらなる負担をかけた例も

 せっかく路盤を強化して線路の一部が陥没する懸念を取り除いたと思っても、強化された路盤自体が軟弱な土に衝撃を与えて陥没したという皮肉な事例も見られる。トンネル内という地下水が多い場所で、しかも新幹線という超高速で列車が走行するために振動が東横線と比べて桁違いに大きい鉄道の線路でという条件で比較することは極端ながら、コンクリート製の路盤の下に空洞が発生したトラブルは参考になると考え、紹介したい。

 路盤の下の空洞はJR東日本東北新幹線の那須塩原駅と新白河駅との間にある長さ2.965mの白坂トンネルで頻発した。白坂トンネルには新青森駅方面と東京駅方面との2本の線路が敷かれ、どちらもコンクリートの路盤の上にコンクリート製のスラブと呼ばれる盤が載せられ、その上にレールが固定されている。トンネルの周囲を流れる地下水は多いほうで、路盤の部分は常に浸水した状態だという。

 細かい説明は省くとして、要は列車の振動がコンクリートの路盤に伝わり、コンクリートが細かい粒に砕かれた。と同時に列車の振動で地下水が汲み上げられるかのように路盤へと上昇し、砕かれた路盤と一緒にトンネル内に噴出してしまう。この結果、路盤の下に空洞が生じ、路盤は最大で32mm沈下したそうだ。

 路盤を補強したり、地下水を排水する能力を高める工夫が施されたがほとんど効果がない。結局JR東日本はスラブの下からトンネル下の土の部分に向けて杭を打ち、トンネル内の線路を橋梁のように変える決断を下す。白坂トンネル内の2本の線路すべての区間が橋梁状となる過程で、合わせて4756本もの杭が打ち込まれた。深夜に実施される1回の作業で打ち込むことができた杭は8本で、工事は2001(平成13)年3月の着工から2005(平成17)年9月の完成まで4年6カ月の歳月を費やしている。

 構造上の問題点を挙げると、白坂トンネルはトンネル底部の断面が直線であったことから列車の振動に対して弱かった。その後掘削された新幹線のトンネルの底部は、インバートと呼ばれる逆アーチ形となって強固なものとなり、路盤の下に空洞ができることはなくなったそうだ。

東北新幹線七戸十和田-新青森間の細越トンネル(長さ2980m)。トンネル下部からの土の圧力に耐えられるよう、底部は逆アーチ形状となっている。鉄道建設・運輸施設整備支援機構の職員立ち会いのもと筆者撮影
東北新幹線七戸十和田-新青森間の細越トンネル(長さ2980m)。トンネル下部からの土の圧力に耐えられるよう、底部は逆アーチ形状となっている。鉄道建設・運輸施設整備支援機構の職員立ち会いのもと筆者撮影

 白坂トンネルの例は極端ではあるものの、軟弱な地盤に橋脚を築く際には同じように杭を打つケースが一般的だ。土の上に敷かれた線路を補強するに当たっても杭を検討してもよいのかもしれない。

参考文献

伊藤壱記、「既設線省力化軌道に適した路盤改良工法に関する研究」、2021年3月

田中宏昌、磯浦克敏編、『東海道新幹線の保線』、日本鉄道施設協会、1998年12月

村上温、村田修、吉野伸一、島村誠、関雅樹、西田哲郎、西牧世博、古賀徹志編、『災害から守る・災害に学ぶ―鉄道土木メンテナンス部門の奮闘―』、日本鉄道施設協会、2006年12月

伊地知堅一、「ウォーター・ポケット」、「交通技術」1955年11月号、交通協力舎

伊東孝之、「路盤研究会の話題から―路盤のはなし―」、「交通技術」1976年10月号、交通協力舎

 個人的な話で恐縮ながら、筆者(梅原淳)は今回の陥没について12月14日放送のフジテレビ「めざましテレビ」と「めざまし8」、TBSテレビの「ひるおび」向けにコメントしている。12月13日中に収録したフジテレビの両番組へのコメントの際、筆者は報道各社が撮影した陥没場所の航空写真をコンクリート製の構造物である高架橋上で起きたものと見誤った。高架橋上に構築されたバラスト軌道のバラストの下はコンクリートやアスファルト、砕石の路盤が一般的であり、今回の陥没もコンクリート製の構造物に異常が生じたのではないかと述べてしまっている。おわびするとともに陥没は盛土の場所で生じたと訂正したい。