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実力者にケガ続出で若手が急浮上!? 発表直前の東京五輪「侍ジャパン」投手選考

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 野球日本代表「侍ジャパン」の稲葉篤紀監督たちが、5月末から6月初旬にかけて選出予定になっている五輪代表24人を選考するための視察を続けている。180人以上の候補選手から、優勝した2019年の国際大会「プレミア12」のメンバーをベースとし、開幕後のコンディションも含めての絞り込みの段階に入っている。選手たちもコロナ禍で五輪開幕の見通しが完全に見いだせない中でアピールを続けている。私なりに現時点での五輪代表候補を探ってみた。

 投手陣では、先発陣をどうそろえるか。首脳陣も頭を悩ませているに違いない。私は開幕前の時点ではパ・リーグのベストナインにも選出された千賀滉大投手、巨人残留が決まった菅野智之投手の「ダブルエース」への期待は大きい。さらに沢村賞左腕の大野雄大投手(中日)、日本代表では中継ぎもできる速球派で多彩な変化球もある右腕の山本由伸投手(オリックス)もいて、層は厚いとみていた。しかし、千賀、菅野がけがで戦線離脱し、大野もコンディション不良で1軍登録を抹消された。3人については一日も早い復帰を待つばかりだが、ほかに目をむけると、広島で昨季の新人王の森下暢仁投手は縦に割れるカーブを武器に安定している。実績面では日本球界に復帰し、五輪出場にも意欲を示した田中将大投手や則本昂大投手らも控える。

実績のある投手の離脱を補うに際し、若手や新人たちの今季の成績に目を向けるときには気を付けたほうがいいと思うのは、五輪という重圧のかかる国際大会で同じような活躍ができるかという点だ。今季のプロ野球は開幕からコロナ禍で観客動員に大幅な制限がかかっている。彼らははたして、野次や歓声が飛び交う満員のスタジアムの重圧でいつも通りのパフォーマンスを発揮できるのか。東京五輪で観客をどこまで入れるかは不透明だが、満員の観客の前で重圧を跳ね返せる「強いメンタル」が日本代表に選考される上では大事な要素になると思うからだ。私自身の現役時代の経験でも、観客の存在が影響を与えるという点は否定できない。一例を挙げれば、完全アウェーの満員の甲子園は平常心を保つことはひと苦労だった。こうした経験を得て、大舞台でも動じない経験が培われる。オリックスの宮城大弥投手や巨人の髙橋優貴投手ら今季の防御率上位はセ・パともに若い選手が多い。もちろん、観客の有無に関係なく、パフォーマンスを発揮できる力を持っている可能性を否定するつもりはない。彼らの「勢い」を取るか、今季の成績よりも実績を重視した選考にするのか。首脳陣の決断に注目したい。

中継ぎでは、開幕前は巨人の左腕、中川皓太投手に注目していた。変則。対左打者はもちろん、右打者に対してもインコースを突き、アウトコースにチェンジアップもあるのは心強い。今季は本調子とはいかないが、変則フォームも国際大会では武器になるだろう。抑えは西武の増田達至投手に期待していたが、調子が上がっていない。入団から8年連続で40試合以上に登板し、2020年は初のセーブ王に輝いた実績をどうみるか。ソフトバンクの森唯斗投手、今季から抑え再転向の松井裕樹投手(楽天)は実績も十分で頼もしい存在だろう。チームでは先発を務めている楽天の早川隆久投手 、広島で抑えに定着した栗林良吏投手はともに1年目で先述の通り、重圧への「慣れ」という点に留意しても、面白い存在だと思う。早川投手はロングリリーフ要員としても貴重で、栗林投手も制球力が高く、初対戦のプロが攻略に苦しむフォークは五輪でも武器になるだろう。(野手編に続く)

【野手編はコチラ】

https://news.yahoo.co.jp/byline/ueharakoji/20210519-00238621/

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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