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令和初の園遊会 天皇皇后両陛下は誰と何を話すのか? 知られざる「ウラ舞台」とは

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
2016年の園遊会でお出ましになった皇室ご一家(写真:ロイター/アフロ)

5月11日、令和になって初めて、天皇皇后両陛下主催の園遊会が催される。

今回は新型コロナ感染対策のために招待者の数は絞られたが、元車いすテニス選手の国枝慎吾さんやスピードスケートの高木美帆選手らメダリスト、人間国宝で歌舞伎俳優の片岡仁左衛門さん、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんなどが招待された。

いつも園遊会で話題を集めるのは、天皇皇后両陛下と招待された著名人との、親しみに溢れる会話だ。どんなことを話しているのか、笑いが巻き起こった瞬間などをクリアな音声で聞くことができるが、いったいどこにマイクを付けているのだろうか?

◆知られざる園遊会での周到な準備

宮内庁の報道室で長年にわたってマスコミ対応にあたっていた、皇室解説者の山下晋司さんは、「園遊会は、両陛下の会話をきれいな音声で聞くことができる、貴重な機会です」と話す。

なぜなら、両陛下と招待客などとの会話を録音し、報道することを宮内庁が認めているのは、園遊会が唯一であるため、周到な準備が行われているからだ。

園遊会で両陛下がお話しされた相手としてクローズアップされるのは、テレビでなじみのある芸能人や著名人、スポーツ選手らであることが多い。それは、新聞社やテレビ局などが加盟する「宮内記者会」が、天皇陛下からお声がけをしてほしい人として5名選び、宮内庁にお願いしているからだという。宮内庁ではその人たちを「特別誘導者」と呼んでいる。

宮内庁は両陛下と特別誘導者との会話の録音は認めているが、その他の招待者との会話の録音は認めていないため、特別誘導者側にマイクを付けてもらっている。

「園遊会には大勢の招待客が来るのですが、取材位置は決まっていますので、特別誘導者にはカメラマンが撮影できる位置に立っていただかないといけません。当日、受付で宮内庁の報道担当から、両陛下からお声がけがあること、宮内記者会から取材要望があることをお伝えし、立っていただく位置までご案内します。私の知る限り、断られたことはありません」(山下さん)

コロナ禍の前まで、園遊会では名物のジンギスカンなど食事や軽食が振る舞われ、招待客の楽しみの一つとなっていた。せっかく来たのだから、料理を味わいたい人も多いはずだ。

そのため、所定の位置まで案内したら、「ここに立っていただきますので、何時何分までに戻って来てください」と伝え、時間まで飲食などを楽しんでもらうそうだ。その間は、その位置に宮内庁の報道担当たちが立って、いわば場所取りをしているという。

特別誘導者が所定の位置に戻ってきたら、テレビ局の音声担当がそれぞれにピンマイクを付けさせてもらい、これで会話をクリアに撮れる準備が万全に整うわけだ。

これまでの園遊会の映像を見ると、両陛下と会話している招待客の胸元よりやや下の位置にピンマイクがついている。屋外なので風のノイズを防げるよう、通称「モフモフ」という風防カバーをつけたピンマイクだ。

通常、ピンマイクは襟元につけるのだが、それより下の位置の胸元なのは、目立たないようにと配慮しているのだろう。確かに「ここにピンマイクがあります」と、誰かに教えてもらわなければ気づかないほど、さりげなくついている。

しばらくすると、いよいよ皇室の方々がお出ましに。両陛下を先導する宮内庁幹部が、「こちらが〇〇さんです」と順番に紹介していく。すると両陛下がお声がけをされるという流れになるのだ。

雅子さま 1999年の園遊会にて (写真:ロイター/アフロ)
雅子さま 1999年の園遊会にて (写真:ロイター/アフロ)

◆皇室の方々はどんな人にお声がけされるのか?

園遊会では、先頭を両陛下が歩かれ、その後ろに他の皇族方が続かれて、招待客に会釈をしたり、少しお声がけをされていく。

招待客の数は、人数を絞った今回でも1,300人余りにのぼるため、お声がけされる人はごくわずかである。

その点、上記の特別誘導者の周辺にいれば、両陛下がお話をされている間に他の皇族方からお声がけされるチャンスも増すのではないだろうか。

園遊会には、首相や国会議員、地方議員、在日外交官、各界の功績者など、多方面の人たちが招かれる。あらかじめ決められた特別誘導者以外にも、両陛下からどんな人たちにお声がけが行われるのだろうか。

「この道一筋50年など、一般には知られていないけれども社会に貢献されてきた人などには、宮内庁から陛下に『是非、お声がけを』とお願いする場合もあるんですよ。でも、その人たちにマイクは付いていませんので、報道はされませんし、どんなことを話されたかも分かりません」(山下さん)

ニュースなどでは報じられないが、園遊会では目立たないけれど地道な活動を続けている人たちに、陛下から励ましのお言葉をかけることも行われているのだ。

今回の園遊会では、両陛下と人びととのどんな会話が生まれるのだろうか。

「来月、ご結婚30年を迎えられる天皇皇后両陛下 雅子さまが語られた『心に残る名言』」https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20230525-00350905

「来月は天皇皇后両陛下ご結婚30年 雅子さまが力を尽くされる『3つのご活動』」https://news.yahoo.co.jp/byline/tsugenoriko/20230529-00351285

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

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