Yahoo!ニュース

雅子さまの動物愛を物語る天皇家の一員となった動物たち、野生のタヌキを見守るお姿も

つげのり子放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)
皇后雅子さま(写真:ロイター/アフロ)

■代々受け継がれてきた皇后としての務め

 今年5月、雅子さまは明治以降、歴代皇后に継承されてきた、蚕を育て生糸を紡ぐ「ご養蚕」を引き継がれた。7月には皇居の紅葉山御養蚕所で、紡がれた生糸を神前に供える「御養蚕納の儀」にも臨まれている。

 雅子さまがご養蚕の折、桑の葉を蚕に与えられる様子がニュースでも伝えられたが、元気な蚕が葉を食む姿に、びっくりされた女性も少なくないだろう。

 一時、雅子さまは蚕のような「いも虫」がお嫌いなのではないかという憶測が流れたが、しかし、事実はまったく逆なのである。雅子さまは幼い頃から、小さな命へ多くの愛情を注いでこられたのだ。

■昆虫や動物が大好きだった小学校時代

 雅子さまのご学友の方から、小学校時代の、こんな素敵なエピソードを聞かせてもらった。それは、小学四年生の夏休みに雅子さまと軽井沢の別荘で過ごした時の思い出だった。

 雅子さまとご学友の彼女が、庭で遊んでいる時に、栗の木の下で弱っている小鳥を発見。その小鳥を助けようとそっと持って帰り、段ボールでベッドを作って、お布団の代わりにちり紙を乗せて、一生懸命に介抱したと言う。

 しかし、小鳥はだんだん息が絶え絶えになり、やがて天国に旅立ってしまったとか。小さな命との悲しい別れだったが、弱っている姿を見ると放っておけない雅子さまの優しさが伝わってくるエピソードである。

 雅子さまは動物への愛情をこの頃からおおいに発揮され、小学校で生物部に入り、学校で飼っていた動物のお世話も行っていた。夏休みの間もウサギの世話をするために、嫌な顔ひとつせず毎日のように学校に通っていらっしゃったとか。

 自宅ではイモリやカメレオンを飼うなど、触れるのが躊躇される昆虫や爬虫類も手のひらに包みこんで可愛がっておられたと言う。生きとし生けるものを慈しむお気持ちは、子どもの頃から雅子さまの中に根付いていらっしゃったのだろう。

 

■天皇家の一員となった動物たち

 結婚前、雅子さまのご実家では「ショコラ」という名前のヨークシャーテリアを飼っており、ご婚約内定報道の折には、ショコラを連れて散歩する雅子さまのご様子が頻繁に報じられていたことを覚えている読者もいるだろう。

 皇室に嫁がれてからも、雅子さまの動物に寄せる愛情は変わることなく、「ピッピ」と「マリ」と名付けた2頭の犬たちを、家族として迎えていた。実はその犬たちは、赤坂御用地に迷いこんだ野良犬が10頭の子犬を産み、そのうち8頭は宮内庁職員たちが引き取り、残った2頭だったのである。小学生の頃、弱った小鳥を放っておけずに介抱された、雅子さまの慈しみ深いお心がここにも表れている。

 ピッピとマリは平成21年、同じ年に相次いで寿命を全うした。その後、生後2か月の保護犬を引き取り、愛子さまが「由莉」と命名され、家族の一員に迎えられた。他にも猫を2匹飼っており、いずれも保護された動物たちである。

 また、天皇ご一家がお住まいの赤坂御用地は自然が豊かで、野生のタヌキも生息している。雅子さまはこのタヌキたちに「タヌエさん」「タヌコさん」と名前をつけて静かに見守っていらっしゃる様子を、前述のご学友の方に話されている。

■雅子さまに受け継がれる皇室の祈り

 雅子さまはおよそ2か月かけて、今年のご養蚕作業を終えられた。生き物がお好きな雅子さまにとって、蚕が桑の葉を食べて成長し、糸を吐いて愛らしい繭を作る様子をご覧になることは、格別の喜びであったに違いない。

 愛子さまも小学生の頃から蚕を飼育しており、艶やかな絹糸が作られる不思議な営みに目を見張られたことだろう。

 雅子さまの生き物へ注がれる愛情は、人間が本来持つ慈悲深さや寛容さ、そして深い優しさを育んでくれる。それは、生けとし生けるものがずっと平和で幸せに暮らしてほしいとする、皇室の祈りにも合致するのだ。

放送作家、ノンフィクション作家(テーマ:皇室)

2001年の愛子内親王ご誕生以来、皇室番組に携わり、現在テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟、日本メディア学会会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。

つげのり子の最近の記事